ＪＥＷＥＬ ３

本質 ページ4

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「美咲、大丈夫だった？」

「あぁ」

「食うだろ？」


　横尾さんはカレーをお皿に盛り、北山
さんの前に置くと自分も彼の前に腰かけ
た。



「なぁミツ、もう美咲はやめとけ」

「はぁ？俺は別にっ、

「広報の前田。美咲は今、出世街道まっ
　しぐらのあいつの彼女だろ？」





「……わかってる」


北山さんの不機嫌そうな声。

　いきなり始まった横尾さんとのシリア
スな話に、この場所に居にくくて私は煙
草を持ってベランダに出た。






「私も行く」


　空気を読んだ茉莉ちゃんも、私の後を
ついてきた。




　ベランダに出ると、梅雨特有の青葉の
香りと、ひんやりとした雨の匂いがする。

　私たちはベランダの柵に寄りかかり空
を見上げた。


「煙草吸っていい？」

「どーぞ」


　私は煙草に火を付けると、思い切り深
く吸い込んだ。吐き出す煙が湿った空気
に溶けてゆく……。






「渉、ミツの事が心配なのはわかるけど
　ああいう言い方されるとミツだってイ
　ラっとするよね……本当は友達想いの
　優しい人なんだけど、言葉がきついん
　だよ」


　横尾さんの弁解をしてから、茉莉ちゃ
んは苦笑いをして私を見た。


「わかってるよ、横尾さん良い人なんで
　しょ？」


茉莉ちゃんは恥ずかしそうに頷いた。


「美咲……、結局ミツのことまだ好きな
　んだと思う。だけどホルモン屋のミツ
　と結婚する気はさらさらないんだよ」

「……」


「今の彼氏、社内ではエリートって言わ
　れてるけど、冷たい感じがして面白味
　がない人なの。どこがいいのか……私
　は全然魅力感じないなぁ……結局美咲
　は、別れたけどミツに彼女ができるの
　は嫌なんだと思う。美咲がいつまでも
　そんな気持ちでミツの気を引くから、
　ミツだって未練がましくなっちゃうん
　だよ……」



そんな……

　その人の本質よりも、ステータスが大
事だっていうこと？

胸がギュっと掴まれたみたいに苦しいよ。




「ねえ、Aちゃんて……ミツのことど
　う思ってる？」

「え？」


いきなり聞かれ、言葉に詰まる。



「ミツのこと、好き？」

「別に何とも思ってないよ」

「嘘。だって今日はミツのことばーっか
　り見てるもん。あれじゃ誰でも気づく
　よ。……美咲も気づいていると思う。
　気づかないバカはミツだけだよ」



　茉莉ちゃんは温かい目で私を見つめ、
「わかっちゃうんだから！」とふざけた
調子で言うと、にっこりと笑った。








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