ＪＥＷＥＬ ３

熱血男、焼肉屋に行く 5 ページ20

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　しっかりと下処理をすることで、臭み
が少なくなり食べやすくなるが、”ヤン”
の場合は特に下処理をすることで食べや
すさが大きく変わってくるらしい。

　
　下処理って大変だけど、それほど大切
な作業なんだよね。一生懸命洗っていた
北山さんを思い出した。


　茉莉ちゃんはホルモンが気に入ったら
しく、何で今まで食べなかったんだろう
って後悔している様子。


「私はピストンと、きゃん たまが気に入
　ったかなぁ」


　茉莉ちゃんて私みたい。今度ディープ
なオヤジの店でサシ飲みしたいかも。


　次から次へと運ばれてくるホルモンを
食べお腹も満足。久しぶりのニカちゃん
や千ちゃんとの会話も楽しくて、あっと
いう間に楽しい時間が過ぎて行った。








＊ ＊ ＊








「佐倉さん、何か……いまいちなホルモ
　ンもあったりしてすみませんでした。
　店も普通でしたね」



　店を出ると、ニカちゃんが申し訳なさ
そうに謝ってきた。

　そんなことない、確かにお店は普通だ
ったけど、すごく楽しい時間だったよ。



「謝ることなんてないよ、そりゃさ、美
　味しいお店を教えてくれる友達もあり
　がたいけど、どんな店にもつきあって
　くれる友達も同じくらい、ううん、そ
　れ以上に貴重だよ。ニカちゃんは、ど
　んな汚い店にもつきあってくれるでし
　ょ？」




「佐倉さん……」


　どういうわけか、ニカちゃんの目が捨
てられた子犬のようにウルウルしてきた。




「だから、ニカちゃんが別に引け目を感
　じる必要なんて全然ないんだよ」

「佐倉さぁーん」

「やだっ、ニカちゃんが何で泣くのよぉ」



　酔っているのか、私に抱き着いて泣く
ニカちゃん。仕事相当辛いのかな……？
なんて、ちょっと心配になってしまった。



「ニカ、Aちゃんの言うとおりだよ、
　俺の店に来れば美味い部位食わせてや
　るぜ」

「ミツぅ〜〜」

「ちょっ、おまえ気持ちわりーから抱き
　着くなっ」




　私が貢献できることは、面白いエッセ
イを書くことと、締め切りをきっちり守
ること。

　ニカちゃん、頑張るからね！なんて、
北山さんにまるで弟のように甘えている
人の良い担当編集者を前にして思ってい
た。







「ニカちゃん、本当に取り立て屋さんみ
　たい」

茉莉ちゃんがクスクス笑ってる。


「そう？」



　ニカちゃんは茉莉ちゃんがタイプなん
だね、デレデレしているニカちゃんが少
し切なく見えてしまった。






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