ＪＥＷＥＬ ３

雨あがり ページ12

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「二階堂の誕生日には、”ザコキャラ”っ
　て書いてあるＴシャツあげたら？」


　そう言いながらくつくつと笑う太輔は
次に出てきたモアイ像を見て固まった。
そんな迷惑そうな顔しなくても……顔の
パーツが中心に寄っちゃってますけど。


「おまえねぇ〜」

「それ、太輔のシックな部屋にぴったり
　だよ。オブジェ的な？」


「Aらしいね、うれしいよありがとう」



ほら、結局太輔はそう言ってくれる。

　太輔はフッと笑い、それからモアイ像
を持ち上げて「どうなってんだ？」って
鼻の部分を覗き込んでいた。






「太輔、これからどうする？雨だし」

「Aは〇〇美術館行ったことある？」

「ないんだ。行ってみたいとは思ってい
　るんだけど」

「じゃあ行ってみる？」

「行きたいかも！」




　徐々に小降りになってきた雨はカフェ
を出るころにはあがり、再び太輔に手を
取られ戸惑う。



「太輔……私たちつきあっていないのに」

「お互いにフリーなんだから、手くらい
　別にいいだろ？嫌？」


　嫌なわけない。ただ、どうしていいの
か分からないだけ……。




「ほら、行こう」

「――うん」



太輔の手は大きくて温かかった。








＊ ＊ ＊








「すごーい！都心にこんなに緑があるん
　だね！信じられないよっ」

「あぁ」

「雨と青葉と土の匂い……」

「非日常的ってやつ？」

「癒されるね、来てよかったぁ」






　南青山にあるその美術館には、都心の
中のオアシスを感じるようなとても緑豊
かな広い庭園があり、四季折々の風情を
感じ心が癒される場所だ。

　国宝をはじめとした様々な美術、工芸
品も素晴らしいが、庭園も一見の価値が
あった。



「あ、鯉だよ！」

「涼しそうだな」

「錦鯉見たの久しぶり」



　庭園には大きい池があり、色とりどり
の錦鯉がゆるりと涼し気に泳いでいた。



「ニカちゃんが、太輔はいっつもこーん
　な顔して原稿読んでるって。今日は自
　然に癒されて！」


　ニカちゃんがしていた太輔のモノマネ
を、私が太輔にしてあげた。


「はいはい、二階堂は明日シメとくよ。
　でもプライベートでは別にそうじゃな
　いじゃん」


「ふふ、そうだけど」






鬱蒼とした木々と、雨あがりの香り。




「俺、きっとすっごい大切にすると思う
　んだよねー」

「え？」



「もしつきあったらね」




太輔は、私を見つめてそう言うと

切なげに微笑み、また池を眺めた。






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