ＪＥＷＥＬ

何かありそうな予感 ページ9

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きっとホルモン焼肉の専門店だよね…？



　っていうか、”北山”の文字が大きすぎ
るでしょ。ホルモンとのバランスわるっ！


　んー、店主の苗字が北山さんなのか、
すごい自己主張が激しい店名……。





　それにしても……汚れてヒビの入った
建物、トタン張りの上部は錆びついて大
きくめくれている箇所もあった。見ての
通り外観はかなり強烈だ。


はいはいはい、もう凄いなこれ……


　お年頃の女子は絶対にブルって入れな
いだろうなぁ。建物の上部にかなり大き
い焼け焦げた跡があるのは火事があった
のかな？


とにかくね……


　もうなんていうか、外観から『何かあ
りそうな予感』がプンプンであります！



　そんな中でも、自己主張すべくピシッ
とまるでアイロンでもかけたかのように
綺麗な暖簾が印象的な店だった。









　肉の焼ける匂いを嗅いでいるうちに、
無性に肉が食べたくなってきた。


焼肉ってなぜか急に食べたくなるんです。


　家からも近いし、今日はここでホルモ
ンでも食べながら一杯飲もうか……それ
に美味しかったらこんな近所だ、好きな
ときに食べに来られる。







　どうせ近所だからと、ボサボサの髪を
無造作に後ろで結び伊達眼鏡をかけてき
た。

　この時の私の恰好は、オヤジが着るよ
うな黒いナイロンのジャンパーにダメー
ジジーンズ、ジャンパーのポケットには
むき出しの５千円札を突っ込み、ジーン
ズのポケットには煙草とライターを入れ
ているという……


　２０代の女としてはありえないほどイ
タイ服装の上に、こういう店に入るのを
全く躊躇しない自分を女として終わって
いる……と思う。


　一人で仕事をするようになってからお
しゃれをしようと思わなくなってしまっ
た。

　インタビューをするとき用に何着かス
ーツは持っていたけれど、会社を辞めて
以来私服はほとんど買っていない。


　今どんな服が流行っているかなんて全
くわからない自分。編集者時代はそれな
りのおしゃれをしてたのにな……


　本当に私、女としてこのままオワルの
かも。


　おひとり様焼肉常連だしね、今日の私
の服装だったらこの店の中にも溶け込め
る自信がある。よし、汚くても全然気に
ならないし入っちゃえ。








　まるでオヤジのような自分の恰好と行
動に苦笑いしながら



私はそっと扉を開けて中に入った。









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