ＪＥＷＥＬ

熱い夜 ページ38

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　その日の夜、太輔から電話がかかって
きたのは２２時を過ぎたころだった。



『一回目の原稿、読んだよ』

『ニカちゃんがね、太輔が厳しい顔して
　読んでたって。ねえ、内容どうかな？
　手直しいる？』


『いや、良かったよ。編集長も面白いっ
　ってさ。でも何だよ”生殖器三種盛り”
　って』


　太輔の声が笑いを含んだ声色に変わり
電話の向こうにいる彼の表情が目に見え
るようだ。よくよく考えれば、あの原稿
を厳しい顔で読んでるってニカちゃんが
言っていたけど、内容的にはかなり面白
可笑しくしたつもり。

　あれを険しい顔で読める太輔って、逆
にすごいな……。





『あー、”えろスペシャル”のこと？』

『……は？……えろ？』

『うん』



　太輔が”えろ”って言うと”えろ”さが
５割増しに感じるのはなぜなのか？



『んはは、”えろ”ねぇ〜』

『何よ』

『A、”えろ”の方に原稿変えよう』

『は？』

『だから、”えろスペシャル”っていうこ
　とで』



そんな声で”えろえろ”言わないでよぉ！

太輔のセクシーボイスの破壊力。



『わかった、太輔が良いならいいよ。ゲ
　ラ送ってくれる？』

『明日どうせ暇だろ？俺も早く上がるか
　ら久しぶりにサシで飲むか？明日ゲラ
　持っていくよ』



『暇ですけど何か？』



どうせ暇だろって……

へいへい、確かに暇ですけどね。



『拗ねるなって、いつも焼肉三昧でA
　の体脂肪が心配だから、明日は和食で
　しっぽりいくか』

『太輔のおごり？』

『もちろん』

『わかった』


　それからたわいもない話をした後、太
輔と新橋で待ち合わせして電話は切れた。









　電話を切った後、私はビールが飲みた
くなってきた。ビールを切らしていたか
ら、やっぱりコンビニに寄ればよかった
と少々の後悔をして、今から行こうか考
える。


北山さんがベランダに来るかもしれない。

でも――

今日……美咲ちゃん来るのかな？




　酒を欲する本能のままにコンビニに向
かう途中、向こうからフラフラと歩いて
くる男女一組。相当酔っぱらっているみ
たいで、時々キスしたりなんかしちゃっ
て、あーやだやだ。



ん？あれは……


ゲっ、北山さんじゃん。


しかも、相手は美咲ちゃんじゃ……




ない。




「今夜は寝かせないから覚悟しとけよ」

「やだぁ、みっく〜んっ！きゃはは」

「ナイトフィーバーいえ〜ぃ！」



ナイトフィーバーって……(笑)

熱血昭和バカ？





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