ＪＥＷＥＬ

見知らぬ女性 ページ29

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網の上の肉を見ていると幸せだな……。



「はい、ひっくり返すーこいつは何度も
　ひっくり返して。今のをあと６回くら
　い繰り返したらベストな。中まで焼き
　すぎんなよ」

「ラジャー！」



　私は、”熱血赤Ｔ男”からのアドバイス
通りに焼くことにした。

　今きっとこの日本で、肉をこんなに熱
く見つめてる人はこの人くらいだよ。

焼肉界の『松○修造』っすか……ぷっ。
まずいニヤけそうっ、私は笑いを堪えた。




これ、食べてみたかったんだよね……

そろそろいいかな？

言われた通りに焼き上げ一口ぱくり。






「美味しい……」


　わずかにミルクの香りを含む濃厚な味
わいと、さらっと上品な脂。表面はカリ
ッとして中はトロふわ。なんだろ、中は
白子のようにクリーミーで全くモツの臭
みもなく、ほど良い塩加減で本当に美味
しい。


「美味いだろ？」


北山さんがニッと笑った。



「んーっ！癖になりそうな美味しさ！」

「相変わらずめっちゃ美味そうに食うな」

「美味しいお肉食べてると、嫌なことと
　か忘れちゃうんだよね」

「俺もそうだよ」



「やっぱりー！？」


　肉を食べるから元気が出てくるのかも
しれないけれど、それだけじゃなくて北
山さんと話していると元気をもらえる。
なんだろ？この人が纏う空気感かな？




「次、”えろ”いっちゃいなよ」

「いっちゃう！いっちゃう！」

「ここで、そのセリフはヤバいっしょ」



「……」


　彼をスルーして私は三種盛りを網に乗
せた。









――その時




「こんにちはー」


　入口から若い女の人の声がして、そっ
ちを見るとスーツ姿の綺麗な女性が立っ
ていた。


え？あの人もおひとり様？

思わず自分の目を疑う。



「あ、美咲ちゃんいらっしゃい」

「みやっち！」



　みやっちは彼女と親し気に会話してい
る。北山さんは彼女を見ると「今日は仕
事？」って声をかけた。



　誰だろう？彼女は北山さんにかわいい
笑顔をむけ


「今年の夏、新しいビールが出るの。こ
　れ試飲して」



　そう言いながら、みやっちに紙袋を渡
してる。



「今日はずっとお店まわりで、夜は接待
　なんだ」

「美咲、体壊さないようにほどほどにし
　とけよ」

「わかってるよ、宏くん相変わらず心配
　性なんだから」



　会話からすると、美咲さんという女性
はビール会社の営業のようだ。



ふぅ〜ん……



”美咲”

”宏くん”




二人はどういう関係なんだろう……？




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