ＪＥＷＥＬ

初体験 ページ28

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「コブクロ、金玉、そんでこれがツル。
　食ったことある？」

「食べたことないかも」


　おひとり様焼肉をする時に、いくら私
でもこういう部位は頼みにくいし、太輔
と一緒に焼肉屋に行っても彼もあえて食
べようとはしなかった。


「コブクロってのは、Aちゃんが想像
　してるようなタマのことじゃねぇよ、
　子宮のことだから」



「そっ、想像してないから！決めつけな
　いでよ」

「あ？してなかった？わりぃわりぃ」



北山さん楽しそう……

　下ネタ言ってるときめっちゃ生き生き
してるな……。




「そんで、金玉はまんまの意味で、ツル
　はあれだ」


「あれ？」






「言わせんなよ……、わかんだろ？」


「……」



　はいはいはい、今の言い方でわかりま
したよ。それにしても今の低音囁きボイ
スでそのセリフを言うのはやめてほしい。



「どうする？食う？」

「もちろん！だけどこれ、その部位だっ
　て知らないで食べたかったかも……」



「そ？それと……今日は良いもんがあっ
　たから仕入れてきたぜ」




　北山さんが、ほらって見せてくれたも
のは”リードヴォー”と呼ばれる部位で、
胸腺のことだ。

　胸腺とは仔牛が乳を飲むための器官で
あり、乳を飲んでいる仔牛だけが持ち、
大人になるにつれなくなっていくとても
希少な部位だって聞いたことがあったけ
れど、私は一度も食べたことはなかった
し実物を見たのも初めてだ。

あまり流通していないんだろう。



「わぁ！綺麗な色！私、一度食べてみた
　かったの！」


　ふっくりとコンクパールのようなそれ
はまさにジュエル。



「じゃあ、今食わせてやるからちょっと
　待ってな」


　北山さんはうれしそうにニコッと笑う
と、しばらくしてカウンターに”えろ三種
盛り”と”リードヴォー”を出してくれた。




「リードヴォーは表面はカリカリに、中
　はふんわりと焼けよ」

「えーっ、難しいんですけどー」



「肉と対話しろ。考えるな、感じろ」



はぁ？やっぱりこの人、頭大丈夫かな？




「とにかくベストな状態に焼き上げるよ
　……じゃあ、これは？」


「”えろ三種”は、もう好きにしてっ」




好きにしてって……。

　良からぬ想像をして、顔がにやけるし
ょうもない私。





「あー、今何考えた？」


北山さんがニヤついてるけど無視無視。





「リードヴォーからいくか……」


　トングで、パールピンクの肉をつまみ
網の上に乗せた。






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