ＪＥＷＥＬ

赤Ｔ男 ページ11

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　店の中を観察するように見回しては、
タレの容器を持ち上げてまじまじと見て
いる女のおひとり様を怪しく思っている
のかもしれない。


　赤いＴシャツに頭にタオルを巻いて、
クリッとした目が可愛いかったりもする。



ふぅ〜ん、カッコかわいい……かな。

だけど、そんなにガン見しなくてもっ




　見つめられ、なんだか居心地が悪くな
った頃、さっきの紫のＴシャツを着た感
じの良い店員さんに声をかけられた。









「お決まりですか？」

「ビールをお願いします、大ジョッキで」

「はい」




「それと、”今日のホルモンの三種盛り”っ
　て部位はどこですか？」






『シマチョウ、ハツ、レバー』





は？カタコト？


　私の質問が聞こえたのか、赤いＴシャ
ツ男、略して”赤Ｔ男”がいきなりカウン
ターの中からぶっきらぼうに答えた。





「あ……、じゃあそれと野菜サラダと白
　髪ネギも下さい」

「タレはどうしますか？味噌ダレと塩が
　ありますけど」




　と、紫のＴシャツの彼が笑顔で聞いて
くる。私はもちろん塩がいい。




「塩で」

「はい」



　紫Ｔシャツの彼はにっこり笑ってうな
ずき、カウンターの中に入って行った。




「大ジョッキ入りましたー」

「うぃーす」



　チャラーく返事をした”赤Ｔ男”を見る
ともう私を見てはいなかった。






　それにしても駅周辺にはたくさんの焼
肉店があるのに、わざわざ少し遠いこの
場所まで来るサラリーマンがこんなにい
るなんて、すごく美味しい店なのかもし
れない。

　待っている間、手持無沙汰で店内をキ
ョロキョロ。壁に貼ってある煙で黄ばん
だメニューには一品料理らしいメニュー
も少しだけ書いてある。


　へぇ〜、一品料理美味しそうだな……
そんなことを思いながら暫く待っている
と









「お待たせしましたホルモン三種です」





……おっ！




「あっ！」




　紫Ｔシャツのお兄さんが運んで来てく
れた皿を見るなり思わず声が出てしまっ
た。




「え？どうしました？」

「あ、いえ、何でもないですっ」



　まずい、私おひとり様だったんだ。肉
を見てニヤケる顔をどうにか元に戻した。







わぉ！ジュエルだぁ！





　目の前の皿の上に乗っているのは、残
念な店で出されているような液状にドロ
ーっとクラゲみたいに伸びきってるホル
モンではなく、形が1つ1つしっかりした
まさにジュエル。






絶品ホルモンだったから……。







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