ある書道家と私 -ki-

10.雨の日曜日 ページ10

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次の日は、朝から雨がしとしと降っていた。
きっと関東地方の梅雨入りももうすぐだろう。


お化けさんどうしたかな？
具合が少しでも良くなっていると良いな……
なんとなく気になる彼の事。


私の部屋はマンションの二階で、丁度真向かいに彼の家が見える。
覗きの趣味などないのにあまり見るのもどうかと思い、普段はレースのカーテンを閉めることにしていた。
カーテンを少し引いて見てみたけれど特に何も変わりはなかった。


昨日の残りの野菜スープを温めて、パンと一緒に簡単な朝食を食べながら考える。
今日は何しようかな……
雨の日曜日、こういう日はこの前見つけたカフェでも行って、現代アートの本でも読もうか……
いつの間にか仕事の事を考えている自分に苦笑い。私ってこんなに仕事人間だったっけ？
家にいても仕方がないので、私は外に出ることにした。






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雨の匂いは好き。
葉っぱの匂いを纏うしっとりとした空気が、なぜか懐かしさを運んでくれるから。

外に出ると、向かいのお化けさんも出かけるところだったみたい。
相変わらずのマスクに今日は赤のジャージ姿とビニール傘。そしてビーサン。ねえ浮くから……この住宅街に全身赤ジャージはないですよ。
それにしても働いている感じがしないし、もしかしてニートなのかな……？



「こんにちは」



私が声をかけるとビクッとしてこちらを見た。そんなに驚かなくてもと、つい可笑しくなってしまう。



「その後風邪どうですか？」
「病院行ったら良くなりました」



きっと抗生物質でも処方されたんだろう。



「良かったですね」
「……はい」
「これからどちらかに行かれるんですか？」
「駅前のコンビニです」



また？この人、駅前のコンビニばっかり行ってる……ふふふ。
まあ一人暮らしの男の人はそんなものなのかもしれない。
そぼ降る雨の中を、駅までなんとなく一緒に歩いた。



「あの……字、お上手なんですね。あまりに達筆でびっくりしました」
「……そんなことないです」
「私、あんなに綺麗な字を見たの始めてで、あの、」
「じゃあ、ここで」



彼は会話を遮るようにそれだけ言うと、軽く頭を下げて足早に歩いて行ってしまった。







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