47.あの日の出来事 ページ47
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「その女性は親父の書道の生徒で……俺も知ってる人だったよ。親父と親子ほども歳が離れている若い女性だった。その生徒は身寄りがなかったみたいで、親父がよく家に連れてきていてさ、母さんも手料理を振る舞ったりして心を許してた。
親父は適当に色んな女と遊んでいると思っていたけどその人だけは違ったのかもしれない。
彼女とは、もう何年も前からそういう関係だったのかもって疑いだしたら止まらなくて……」
そんな……
「母さんが二人の関係をどう思っていたのかは分からない。だけど、その女のためによく手料理を振舞ってやってた。哀れだろ?
母さんは親父をいつも待ってたのに。いつか自分のところに戻ってきてくれると信じていたんだよ。
母さんが死んだ時は一度も病院にさえ来なかったのに……それなのに、その女と………一緒に死ぬなんて……」
「その女性と関係があったのか分からないんじゃないですか?」
「そうだけど……親父にとって特別な人だっていうのは見てて分かったよ」
北山さんは、頭を抱えたまま顔をあげて私を見た。
「俺と母さんはいつも後回し。愛情なんて注いで育ててもらった記憶がない。書道について厳しく言われた事しか俺には思い出がない。
親父が死んで……何かをしようとする気力が全くなくなった。
俺達を決して顧みなかった親父に対しての憎しみなのか、嫉妬なのか、愛情なのか?よく分からない感情が俺を支配して……
俺があの時たてつかなければ、車で出かけることもなかったんじゃないかと思うと罪悪感にも押し潰されそうで。本当に事故だったのか?なんて考えだしたら頭がおかしくなりそうだった。
それ以来、全く筆が持てなくなった。
とにかく書けなくて、すげえ苦しくて……俺は筆を持つのをやめた。
またこうして書けるようになったのは一年前くらいからだよ」
私は手を伸ばして北山さんの手を握ろうとした。
手の甲に触れ一瞬ビクッと震えたけれど離したくなくて、そのまま包み込むように握った。
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siori(プロフ) - にかみつばさん» にかみつばさん、お返事遅れてごめんなさーい!また来てくださったなんて感激です!星も嬉しいです。また書道やってほしいですね! (2021年3月3日 19時) (レス) id: ad892650f9 (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - 久しぶりに書道家の北山さんに会いたくなって来ました。いいね☆していなかったみたいでごめんなさい!右☆をポチッとさせて頂きました! (2021年3月1日 0時) (レス) id: a0721de2a5 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - にかみつばさん» にかみつばさーん!お待たせしました!パス付きの方は夜には外せると思います!遅くなってごめんなさい! (2020年7月5日 16時) (レス) id: 05c0397959 (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - ありがとうございます。明日明後日にはと仰っていたのでずっっと楽しみにしていました!これから読めるのが楽しみです。 (2020年6月5日 1時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - にかみつばさん» にかみつばさん、お待たせしましたー!2のパスワードを外しましたのでお知らせします。大好きと言って下さり感無量です!涙 (2020年6月5日 1時) (レス) id: f587e16f89 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:siori | 作成日時:2016年6月4日 13時