ある書道家と私 -ki-

5.彼の書 ページ5

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プシュッ
疲れたぁ……



シャワーの後、ビールをグビグビ飲みながらお弁当を食べる。
冷えたビールが美味しいっ！
自分で言うのもなんだけれど、お酒は結構強い方だ。あっという間に飲み終わり二本目を空けた。
私はまだ二十二歳なのに、最近ますますオヤジ化してきた気がする。
大学時代からつき合っていた彼は、入社していきなり配属が札幌になり、遠距離は無理だと言われて別れた。
当分は仕事に生きろってことなのかな……
乾き物をつまみながらぼんやりと、今日、藤ヶ谷さんから貰った資料を見始める。



雅号は北山碧水か……
うん、似合ってる。



写真を何度見ても爽やかでかっこよくて、この人が、変人の引きこもりの女性恐怖症だとはとても思えない。
何ならその辺の芸能人よりかっこいいかも。ペラっと捲って二枚目の資料を見てみた。

幼少のころから書道を学ぶ……か。
へぇー高校生の時に師範を取得しているんだ。



あれ？お父さんも書家？



北山 伊織(いおり)
あ……この人知ってるかも……



確か凄い有名な人だよね？だけど何年か前に亡くなった記憶が……スマホで検索してみる。



故 北山伊織 享年５７歳



やっぱり！お父さん亡くなっていたんだ……







彼がどんな書を書くか気になりネット検索してみると、沢山の北山さんの写真と彼の書が出てくる。やはりネットは凄い。
これはパフォーマンスしている写真かな？
大きい紙に大きい筆で『道』って書いている。
藤ヶ谷さんは力強くていい字を書くって言っていたっけ。


確かに……。好みって人によって違うとは思うけれど、私も好きかな……躍動感のある書が得意なのかもしれない。
この『瞬』の字もいいな……


若いイケメン書道家か。


海外でパフォーマンスしたり、コンクールで優勝したり、個展やったりしていた時期もあるんだな。
メディアにも取り上げられているし、有名書家の息子でイケメンでってなると、引く手も数多だったのかと容易に想像できた。
明日、二階堂君とこの話つめてみなくちゃ。書道の世界って奥が深くて楽しいかも……
気がついたらいつのまにか一時を過ぎていた。
そろそろ寝ないと明日起きられないや。



カーテンを閉めに窓のところに行くと、お化け屋敷の明かりがまだついている。



あの人……



相当具合悪そうだったのに、まだ起きてるの？


そんな事を思いながら遮光カーテンを閉めて、私はベッドに入ってすぐに寝てしまった。







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