ある書道家と私 -ki-

27.縮まる距離 ページ27

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そハンバーグを捏ねながら、そんな事をぼんやり考えていると北山さんがやってきた。



「おまたせ。え？ハンバーグ？」

「はい」

「美味そう」



私を見てニコッて笑う顔が可愛い。
最近は私にも笑ってくれるようになった。

だけど相変わらずのボサボサ頭。
前髪切ればいいのに……




「この前、うちの会社に新しい社員さんが入ったんです」

「ふーん」

「佐伯葉子さんていう人で、前に北山さんと一緒に仕事したことがあるって言ってましたよ」

「佐伯葉子？」

「お知り合いですか？」

「悪いけど覚えてない」



佐伯さん、覚えてないそうですよ！若干彼女にムカついていた私は、心の中でガッツポーズをとった。




「なにニヤニヤしてんの？」

「え？なんでもないですっ」



捏ねたハンバーグをフライパンに並べて焼き始めると、香ばしい美味しそうな匂いが漂ってきた。




「良い匂い。すげー腹減ってきた」

「あっ！！！！」

「なにっ？！」



北山さんがびっくりして私を見た。



「ご飯炊き忘れましたぁ！」

「そんな事？ハンバーグとビールでいいじゃん」

「でも……白いご飯大好きじゃないですか」

「俺、ビール飲むときあんま白米食わないから」




そんなふうに言ってくれたけれど、本当はご飯を食べたかったに違いない。

北山さんと話すようになって分かった事。


割と大雑把である。
髪型とかはどうでもいいらしい。
楽な服が好き。
朝が弱い。
お肉大好き。


それと、変わり者だけれど北山さんはすごく優しいってこと。





その日、ご飯が食べられなかった北山さんは
大きいハンバーグを五個も食べた。







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