17.北山さんの家 ページ17
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「うちの編集者の藤ヶ谷が北山さんの個展を見て、なんともいえない良い書を書くって言っていたからです。上手な書を書く人って沢山いると思うんです!だけど、良い書ってただ上手なだけとは違う気がして……私、どうしても実物を見たいんですっ、ダメですか?」
本心だった。
あれ?
全然反応がなくなっちゃったな。
やっぱりダメかぁ……
その時だ。
『…いいよ』
えっ?いいの?
そしてガチャリと玄関のドアが開いた。
「散らかってるけど」
「じゃあちょっとだけ、おじゃまします…」
よっしゃ!
こうして私は北山さんのお宅に入ることに成功した。
初めて入る北山さんのお宅は外から見ると廃墟みたいだけれど、室内はシンプルで印象が違った。それほど散らかってはいなくどちらかというと綺麗に整頓されていた。
「きれいですね、部屋……」
「そう?今、ちょうど今書いてた」
よく考えたら、男の人の家に一人で上がりこんじゃった。ニカも一緒に来てもらえばよかったかも。
襲われないよね?
女性恐怖症だっけ……
またそんな失礼な事を思いながら彼についていく。
「あの、畳の部屋とかじゃないんですね。書家の方の書斎って畳ってイメージで」
無視かいっ……
めげない、めげないっ
北山さんは椅子に座ると、大きな机で何かを書き始めた。
すっと伸びた姿勢にすっごい真剣な横顔。
思わず、彼に見惚れてハッとした。
”風花”
細い線で、掠れたような薄い色と濃い色の濃淡。全体的にほんわかしてて。
風と花の、線だけの描写。
すごい優しい字だなぁ……
「あの……風花って?」
「晴天に、花びらが舞うようにちらつく雪のこと」
「綺麗……」
心の声が口から漏れた。
「新潟の女性向けの日本酒のラベルなんだよ。こっちの感じとこれと、どっちが合ってると思う?」
なんと、私なんかに訊いてくれるんですか!?
私は正直びっくりした。
「え、えーと、こっちですかね……」
「何で?」
「うーん、直感で」
書なんてよく分からないのに、何故かこっちの
方が良い気がして、思わず言ってしまったこと
を後悔した。
「俺もそう思う」
「え?」
「いや……直感で」
北山さんはそれからも、私なんていないかのように何枚もその字を書いていた。
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siori(プロフ) - にかみつばさん» にかみつばさん、お返事遅れてごめんなさーい!また来てくださったなんて感激です!星も嬉しいです。また書道やってほしいですね! (2021年3月3日 19時) (レス) id: ad892650f9 (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - 久しぶりに書道家の北山さんに会いたくなって来ました。いいね☆していなかったみたいでごめんなさい!右☆をポチッとさせて頂きました! (2021年3月1日 0時) (レス) id: a0721de2a5 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - にかみつばさん» にかみつばさーん!お待たせしました!パス付きの方は夜には外せると思います!遅くなってごめんなさい! (2020年7月5日 16時) (レス) id: 05c0397959 (このIDを非表示/違反報告)
にかみつば(プロフ) - ありがとうございます。明日明後日にはと仰っていたのでずっっと楽しみにしていました!これから読めるのが楽しみです。 (2020年6月5日 1時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - にかみつばさん» にかみつばさん、お待たせしましたー!2のパスワードを外しましたのでお知らせします。大好きと言って下さり感無量です!涙 (2020年6月5日 1時) (レス) id: f587e16f89 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:siori | 作成日時:2016年6月4日 13時