ある書道家と私 -ki-

15.やらかしてしまった ページ15

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次の日



まずは深呼吸

はい、大きく吸ってー
はい、吐いてー



うぅ……いくら根性があってもやっぱり躊躇う。

プルプル震える指でインターフォンに指を伸ばす。


あー、ダメだっ！もう一回。
うーっ、押せないっ


私どうしちゃったんだろ？いつもだったら当たって砕けろのはずなのに……


よしっ！もう一度！あーーー！

右手を左手でつかんで……

えいっ！

ピンポーン

押せた！藤ヶ谷さんっ押せましたよ！






「はい」


その時、私のすぐ後ろで声がした。
振り向くと、黒いジャージ姿の北山さんが私のすぐ後ろに立っていた。




「ギャッ！」



あまりにびっくりして思わず変な声が出てしまう。もうっ！背後で気配を消すのやめてほしい。



今の見てましたよね？
一部始終！私の怪しい動きを……




「何してるの？」



眉間にシワ寄せて、ものすごーい訝しげな顔で私を見てる。





「えっ？あ、あのっ今お帰りですか？」


北山さんは、そっけなくうなずくと門を開けて中に入ろうとした。




「まっ、待ってくださいっ！」


思わず、ジャージの裾を掴んでいた。




「はい？」

「あのっ、お話しだけでも聞いてもらえませんか？」



北山さんはため息をついた。




「話すことないです。じゃっ」

「まっ、待てぃ！」




「まてぃ？」




焦って時代劇みたいな変な言葉が出てしまった。

あれ？今ちょっとだけ笑いましたよね？

だけど、北山さんは取りつく島がないくらい直ぐに無表情になった。




相変わらず髪がボサボサだけれど、この人ってやっぱりかっこいい。




「あ、ホントすみませんっ少しだけでいいのでお話し聞いてくださいっ、お願いしますっ」




私は何度も頭を下げて必死で頼んだ。




「一分」



「は？」



「一分だけ聞く。はい、スタート」



ええっ？！



「あのっ、この前の事ですけど私本当に知らなくて、言いわけじゃないんです。私、ずーっとこのお化け屋敷にはどんな人が住んでるか知らなくて。だって北山さん私と会った時から風邪引いてて、マスクに変なジャージだったじゃないですか？赤と黒を交互に着ててそれしか持ってないみたいだし。
初対面の深夜なんて、本当に変質者かとばかりっ！まさかこんなきったない廃墟みたいなところに北山さんが住んでるなんて普通思いませんよっ！それにっ、」



「はい、時間切れ」




あっ時間ギレっていうか……

北山さん若干キレてます？





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