素敵帽子と私の恋物語【中原中也】 (ページ9)

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9…不安、好き。ページ9

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其れから私達はお互い無言だった。其の間も中也さんはずっと渋い顔をしている。

何時もの中也さんじゃ無い。…厭な訳じゃ無いのだけれど、何か、落ち着かない。

私は此の沈黙か耐えきれず中也さんに話し掛けた。…のだが_____

『中也さん』

「__ッ！」

………如何して其んなに身構えているのだろうか。私は名前を呼んだだけなのに。

何か段々と苛々来る。…中也さんがこんなに弱気だと。

此処は一発喝を入れなきゃね。

『中也さん！！』

「なっ！んだよ…」

吃驚し過ぎて声裏返ってますよ。今から一寸だけ真面目な話するんですから笑わせないで欲しい。

私はコホンッと咳払いをすると、中也さんに先ずこう告げた。

『私、中也さんの事好きです』

「お、おう！…………………は？」

中也さんは別の言葉が来ると思ったのか間抜けな返事をした。

まあそりゃあ行き成り告白したんだもの。吃驚するよね。其う云えば、初めて好きって云ったかも。

…其の初めての告白がこんななんて。ある意味印象に残るかも。

「え、ちょ……な、ンだよ、急に……え、好き？手前が？俺の事を？」

『落ち着いて下さい』

「ンな落ち着けるかよ！…其の、何だ、あれか？…俺の事、男として好きって事なのか？」

『其れ以外に何が或りますか』

「否…友達として、とかあンだろ？」

『中也さんの事友達とか思った事有りませんね、其う云えば』

「其う云えばって何だよ。…ンで、行き成り何で告白なんだよ」

…あ、察してくれない感じですか。其うだよね。中也さん、鈍感なの忘れてた。

『中也さん、正直に応えて下さい』

「お、おう」

『自分の仕事の内容を云っちまった。嗚呼、俺若しかしたら嫌われたかもしれねェ。否、嫌われて無くても何時も通りに話せないかもしれねェ。……とか、考えましたか？』

「……」

中也さんは図星なのか黙った。……無言は肯定と見なします。

『阿呆ですか。莫迦ですか。貴方は帽子置き場ですか。頭の中まで帽子の事で一杯なんですか』

「ちょ、テメッ！つか、最後の二言悪口なのか！？」

其んな事はどうでもいい。

『中也さんが好きです。貴方の仕事がどんなに危険でも、犯罪だったとしても………私は中也さんの事が好きです。大好きです。…此れだけでは不安ですか？』

中也さんの顔、真っ赤だが私は気にせず云った。………まァ、一応一枚だけ撮ったが。

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