1月・肆拾【吉継】 ページ46
吉継視点
そうだ、俺は戦国の世で長政様と秀吉様の元で…高虎や三成たち友人と戦場を駆け、己の策で道を示すときもあった…
そして、遠縁で歴戦の勇士と呼ばれていたAを妹として向かい入れ、今のように…いや、今より少し他人じみては居たが…それでも1度、幼い時に会った時から同じように接していた…
それなのに、俺は関ヶ原の地で友に首をとらせAを残してしまった…命が消えゆく間際、Aの見開いた目から溢れだしそうになっている涙を見た瞬間、昔から安心させるときに言っていた言葉を呟きながら微笑みかけた。
【大丈夫だ】
と、だが声が出る訳もなくAはただ苦しい思いをしただろう…冥府で待っていてもAは訪れず、最期を看取った高虎が来て漸くAの最期を知る。
心身共に苦しかっただろう。聞いた最期はあまりにも残酷で、悲しく、寂しく、実に武士という言葉が似合う最期…それを癒せもしない流れは、神が決めたのか…
『吉継兄?信長さんとお父さん、家康さんの餅つき始まるよ!』
「あぁ、三成たちも待っている流れだな」
2人分の皿と箸を持つAに呼びかけられ、現実へと引き戻される。庭には家族たちが集まり、蒸した餅米が石臼へ入れられる。
「吉継、Aも付くようだぞ。吉継…?お前も…」
「三成、今は可愛い妹の頑張りを見届ける流れだ。大丈夫、混乱もしてないしAへの気持ちは変わらない」
信長とともに杵を楽しそうに振り下ろすAを見ながら、俺の半分しか見えない表情をみて三成が気づくが、俺は平気なのを伝えAの姿を見る。
たとへどんな姿に、どんな形になろうとも、何度生まれ変わろうとも、必ず現れ守ろう…大切な妹のために…
「もう、大丈夫だからな…」
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