勝利は私の手に 2 【潔世一 成り代わり】

79話「まだ、終わってない」 ページ47

『久しぶりだな、天才(笑)くん。何しに来た？ 才能のブッ壊れたお前になんの価値がある？ 才能があるかないか、それだけの事だろ？』


仕返し、とでも言いたげに言う鰐間弟。隣で鰐間兄も頷いている。ただただ、悔しかった。

それから千切はリハビリに励んだ。辛い日々。それでも、あの才能が恋しかった。

もう動いても大丈夫になり、練習に戻るも、明らかに速度が落ちていた。それも、無意識に。


『おいおいどうした、天才(笑)くん。それが全力か？ 自慢の快速はどうしたよ。全力で走ってまたブッ壊れるのが怖いか？ あ？』


─────……うるせぇ、黙れ。……黙れ……！


この右足がブッ壊れるのが怖いんじゃない。俺は、今までずっと「世界一になれる」って、信じてた。……俺が俺じゃなくなるのが怖いんだ。

それから、見えない鎖が千切の右足を封鎖するように絡みついているようだった。


─────……あれから俺は、諦め方を探してる。


全力で走っている、チームＺのみんな。足を止めている千切はそんなメンバーを横目に諦めていた。試合終了まで、あと五分を切っていた。


(あと五分……。あと五分で、チームZ(俺達)は負ける。これで、これで……俺のサッカーは終われる——)


「走って……走れ！ 千切！ まだ、終わってない！」


背後から声がする。振り向くと、そこにはAが居た。

何で、お前は諦めないんだ。

Aと眼が合うと、ドクン……と、何かが動く音がした。その瞳に眼が合った瞬間、心の奥底で眠っていた何かが目覚めたような……。

ようやく此処で諦めれると思ったのに、まだ諦めない独善者(エゴイスト)、潔Aがそこに居た。


鰐間兄が保持していたボールを、國神と雷市で奪い返す。ボールは今村に渡り、またAへとパスが渡る。すると、鰐間弟がAの目の前にまた現れる。


「おいおい、何回トライしても同じだぜ？お前らの攻撃パターンも、武器もバレてんだ。しかも１２人対１０人！」


そして、そのまま４−３で勝ち抜こうと、守りを固め出すチームＷ。誰かが的の守備をこじ開けなければどうにもならない。蜂楽はずっと人数をかけてマークされている。

國神がシュートを撃つスペースもない。我牙丸にパスを出すか、でも、リスクが大きすぎる。それか、無理やりゴール前に……。それも駄目だ。数的不利で簡単に弾き返されてしまう。

チームＺの武器が完全に封じられている。

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