78話「過去」 ページ46
いちいち嫌味な事を千切に言う鰐間兄弟。
「安心して突っ立ってろ!」
そう一言残すと、千切はスピードをだんだん落とし、唇を噛み締めていた。
「何やってんだ、千切! 足止めんな、追え!」
雷市にそう声をかけられるも、千切の表情が変わる訳でもなく、ただ悔しそうに唇を噛み締めて突っ立っているだけだった千切。
(……うるせぇ、俺は──────)
千切は約二年前、羅古捨実業高校に入学し、そのままサッカー部に入部した。羅古捨実業高校サッカー部は全国常連校で、あくまで、千切は自分の名前を売る為に入学した。
そこで出会ったのが鰐間兄弟。くだらない様な上下関係を新入部員達に求めてきた鰐間兄弟に嫌気がさした千切は、サッカーで勝負を持ちかけ、千切が勝てばやめるとのことで、結果は千切が勝った。
暫く経てば、羅古捨実業高校サッカー部は鰐間兄弟のツートップだったフォーメーションも、千切のワントップとなり、あっという間に千切は部内のエースストライカーとなった。
『いきなり監督に気に入られたからって、調子乗んなよ。と、お兄は言ってる!』
『……別に、才能があるかないか、それだけの事ですよ。おつかれっす』
先輩である鰐間兄弟達の嫌がらせのような言葉にも、興味無さそうにしていた千切。
才能ってやつは平等じゃない。千切は選ばれた人間だった。初めて他人をブチ抜いた六歳のあの日、サッカーが千切の全てとなった。
この世界には才能がある
そして、嫌な音がした。試合途中、ゴールへと駆け出していた千切は、一歩一歩と力強く走っていた。いつもの様に速く、誰にも追いつけないスピードで。
あと一歩と、踏み出した時、右足が壊れた。自慢の
医者からの診断は、右膝前十字靭帯断裂。
──────『もし再断裂を起こすような事になりますと、サッカー選手として生きていくのは難しいと思われます』
医者から告げられたその一言は、千切の心に収まらずに、ただただ理解したくなかった。
松葉杖をつきながらの生活は、千切にとって苦痛だった。
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渡月(プロフ) - 豆腐。さん» コメントありがとうございます!!!潔世一は不憫でなんぼですから(?)好きって言っていただけて何よりです!!これからも更新頑張りますので、待っていただけたら幸いです!!豆腐。さんのために頑張ります!!(?) (2023年4月3日 18時) (レス) id: b05dbf39f9 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐。(プロフ) - 誕生日の話の最後の潔くんが不憫すぎる……本編も番外編も全部好きです!!更新楽しみにしてます!! (2023年4月2日 22時) (レス) id: 8e2b958038 (このIDを非表示/違反報告)
渡月(プロフ) - 眠いちゃんさん» またまたコメントありがとうございます!!毎回好きって言っていただいて、、、もう眠いちゃんさんが好きです!!(?)男だらけで平気なのはエゴイストだからです(((((( (2023年3月23日 21時) (レス) id: b05dbf39f9 (このIDを非表示/違反報告)
渡月(プロフ) - ちーやさん» コメントありがとうございます!!楽しんでいただけて嬉しい限りです…!!!めちゃくちゃ嬉しいこと言っていただけて、本当にモチベ上がります!!かっこいいって言って貰えて本当に嬉しいです!!これからも頑張って更新するので、待っていただけると嬉しいです! (2023年3月23日 21時) (レス) id: b05dbf39f9 (このIDを非表示/違反報告)
眠いちゃん - 格好いい…好き((( 男だらけな場所で平気(?)な主人公よ…… (2023年3月22日 21時) (レス) @page28 id: acdc06f415 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:渡月 | 作成日時:2023年3月14日 20時