勝利は私の手に 2 【潔世一 成り代わり】

77話「おつかれ」 ページ45

４−３……。これで、チームＷが優勢となった。

そして、久遠はチームＺに向かって手を挙げ、いつもの様な爽やかな笑顔で……だけれども、その表情はチームＺにとっては憎たらしいものでしか無かった。


「おつかれ、チームＺ！」


(クソ、クソ！！ 裏切り(こんなの)で終わってたまるかよ……！)


Aが悔しそうに汗を拭いながら久遠を見つめているのを、千切は呆然と見つめるだけだった。


「だぁあっ、マジで許さん！ 久遠殺す！」

「落ち着け、雷市！ レッドカード食らうぞ！」


久遠にキレる雷市を、國神が抑えるも、今現在、後半三十分。もう試合時間は残されていない中の久遠の裏切りは、１２人対１０人と言う、サッカーでは有り得ない様な、チームＺに敗北の危機をもたらした。

─────……絶対、潰す！

そして、ボール保持者のAが前線に駆け上がるも、鰐間兄弟に直ぐに並ばれてしまい、鰐間弟が煽るように口を開く。


「だから言ってんじゃん。久遠ちゃんからバレてんだよ、お前らの武器も戦術パターンも何もかも！ 例えば、潔A。お前は『優れた空間認識能力を持つが、一人じゃ何も出来ない欠陥品(ポンコツ)だ』と！」

「諦めなよ、サッカーは１１対１１のスポーツだ。１２対１０じゃあ、勝ち目なんてないってば」


鰐間兄弟の挑発に乗っかるように、久遠もAを小馬鹿にしたように言う。すると、Aが保持していたボールを久遠がとった。

こっちの戦術がバレている上に、１２対１０は、圧倒的不利(ディスアドバンテージ)だ。逆転なんて、無理だ。そして、鰐間兄が久遠からパスを受け、そのままシュートを放った。だが、伊右衛門がそれをセーブした。


「こぼれ球(セカンドボール)拾え！ 一点だ、一点でいいから取れ！ この試合はもう負けなきゃいい、引き分けでもいいんだ！」


あと一点を取って追いつき、引き分けで終われば、最終戦でギリ望みは繋がると言う伊右衛門。一勝一分一敗で、勝ち点は４。そうすれば、ギリ生き残れる。


「死んでも一点取れ！ ゴールは死んでも俺が守る……！」


伊右衛門の熱に、チームＺの士気も上がる。そして、こぼれ球(セカンドボール)は千切の付近へと転がっていく。


「取れ、千切！」

「おっせぇなぁ。お前のサッカー人生、今日俺達が完全終了させてやる」


千切がボールを取ろうと追いかけるも、鰐間弟にボールを横取りされてしまった。

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