勝利は私の手に 2 【潔世一 成り代わり】

72話「ごめん」 ページ36

久遠が受け取ったボールを、鰐間弟が奪い取る。鰐間兄弟が中盤からＤＦしてきた。後半で、戦い方を修正してきたのか、と考えるA。

現在、左SB(サイドバック)のAは、ワンツーコンボで駆け上がってくる鰐間兄弟の位置を見定め、次の策略を考える。

考えついた答えは、ファウル覚悟で止めること。ボールを持っている鰐間兄の足元にスライディングで止めに入ろうとするも、ジャンプで飛び越えられてしまった。


(やばい、２対１じゃキツいか……！)


「千切……！」


最終ラインにいる千切に止めに入るよう合図を出し、それに賭けるも、鰐間兄弟のワンツーコンボには敵わない。

俺がやる、と、伊右衛門が意気込むも、鰐間弟はニッと笑い、フリーの鰐間兄にパスを出す。そのまま鰐間兄のシュートが炸裂した。

後半開始直後、スコアは１−３。

やはり、二人とも自由にさせると、危険すぎる。


「落ち着こう、まだ二点差ある。無理に攻めなくていいから、確実にパスしてこー！」


リーダー気質でもあり、今回の試合で３点を決めている久遠がそう言うと、みんなもその意見に賛同する。

まあ、そうだ。リードしているのはチームＺだ。このまま無理に攻めて点を取られるよりも、今取っている３点を上回らせないことにかけた方がいい。

ボールを受け取った久遠が、Aにパスを出す。


「Aちゃん！」

(え、私にバックパス！？ …てか、弱っ……！)


久遠からの中途半端なパスは弱いもので、久遠からそこそこの距離があるAには届かない。ゆっくりと転がっていくボールを、Aが追いかける。だが、Aよりも先に鰐間兄がボールを奪う。


「あ、ごめん！」


この凡ミスは、致命傷だ。鰐間兄から、鰐間弟にボールが渡り、弟が力強くシュートを決める。

２−３となり、チームＺは追い付かれそうだ。


「なぁにやってんだ、久遠オラァ！？ ３点決めて集中切れたか、あぁ！？」

「落ち着け、雷市！ モメんな！」


致命的なミスを連発した久遠に詰め寄る雷市を、國神が止める。


「ゴメン……、何やってんだ、俺。こんな大事な試合で……ごめん！」


久遠はしゃがみこみ、膝をついて地面に頭がつくほどに、深い土下座をした。その久遠の姿に、雷市と國神も戸惑いを隠せない。


「……頭上げろ。わざと失敗した訳じゃねぇだろ、切り替えっぞ」

「は？ 謝って済むかよ。二失点とも、久遠(コイツ)からだろうが！？」

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