勝利は私の手に 2 【潔世一 成り代わり】

68話「終わった選手」 ページ32

そして、翌日。

第伍号棟、第七試合。チームＷ対チームＺは、チームＷボールから、試合が始まろうとしていた。

そして、キックオフ。

ボールを保持しているのは鰐間弟。勢いよくボールを蹴り出すと、鰐間弟は鰐間兄にノリノリで話しかける。


「いっくぜー、お兄！ いつパス欲しい？ どんなパスが欲しい？ ねぇねぇねぇ！」


しつこく鰐間兄に質問をする鰐間弟。すると、鰐間兄は、無言でくわっ！ っと表情を引き締めた。すると、鰐間弟は、その表情から何を言いたいのかを読み取り、笑顔で頷く。


「このタイミングで、足元へのパスが欲しい！ と、お兄は言っている！」


どんっと、素早く勢いのあるパスをすると、鰐間兄は満足そうな笑顔を浮かべて頷く。顔で会話している兄と、それを読み取って笑顔で答える弟。

すると、そこからワンツーパスで、次々とチームＺのディフェンスを突破していく。

そのプレーに、チームＺも焦り出す。

最初の三十分、Aは最終ラインの右CB(センターバック)。やることは明確だった。

あの二人のコンビネーションを全員で食い止めようとする。

だが、鰐間兄弟は止まらず、そのまま突き進んでくる。映像で確認したはずなのに、チームＺの攻撃は通用しなかった。


「俺達の武器は以心伝心連携(アイ・コンタクト)！ 付け焼き刃のＤＦで看破出来るほど、甘くないぜ！？ と、お兄は深く思っている」


さっきから、変な語尾をつけながら話す鰐間弟。鰐間弟に共感するように頷く鰐間兄と一緒にそのまま駆け上がってくる。


「千切、来るよ！ 私達で止める！」


最終ラインまで突破してきた鰐間兄弟を、ポジションが隣の千切とAで止めようとAが持ちかけるも、千切と言う名前に、鰐間弟が反応する。


「千切……？ 千切って、あのガラスの天才くんですかぁ？」


鰐間弟がそう言うと、千切の表情が変わった。千切を見るなり、鰐間兄弟の顔付きが憎たらしい笑みに変わる。


「おいお兄！ コイツまだサッカーやってるよ。余っ程、自分の過去の栄光が忘れらんないんだろうなぁ！？」


千切と目を合わせると、鰐間兄はニタァ……と、邪悪な顔付きに変わる。


「うんうん、そうだね。同じ部活の元チームメイトとして言わせてもらえば——……

もう、お前は終わった選手なんだよ。と、お兄は言ってる」

鰐間弟が鰐間兄に出したパスは、千切の背後を抜け、そのままパスが鰐間兄に渡る。

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