勝利は私の手に 2 【潔世一 成り代わり】

48話「目立ってないアイツ」 ページ11

「蜂楽、もう一回！ 行ける！」

「今度はサイドから来るぞ！」

「間(スペース)固めろ！」


イガグリが蜂楽にもう一度ボールを返せば、とんっと、優しく受け止める。そのままドリブルで突き進もうとしても、またもやディフェンスが抜かせてくれない。

A達、チームＺが個人の武器を生かした超攻撃型の作戦なのに対して、チームＹはその武器を封じる守備的布陣。

それに、A達チームＺには、まだ８人分の武器が残っている。


(蜂楽のドリブルは確実に効いている……。このまま押せば、絶対に崩れる……、勝てる……！)


そして、試合時間は残り八十分。蜂楽の時間は、ここで終了だ。


そして、次は國神のフォーメーション。國神の武器は、左足のミドルシュート。球(ボール)を持ち上げるのは味方に任せて、自分はフリーで前線に直行するというものだ。


人数の多いP・A(ペナルティーエリア)よりも、人数の多い手前のスペースにポジショニングして、見方からのパスを受け、味方が空けたシュートコースにその強烈な左足のミドルシュートを叩き込む。

その作戦通り、順調にチームＺがボールを繋いでいき、スペースができた。


「撃て！」

「今、行けるよ！」


左右にディフェンス陣を止めてくれているチームＺメンバー。そして、國神がシュートを放つ。

だが、そのシュートはチームＹのディフェンス二枚に止められ、シュートブロックされてしまった。それ程に相手の守備は固く、なかなかゴールさせてくれない。


「おら、クリア！」


チームＹのディフェンスがクリアしようとしたボールをAは受け止め、もう一度敵陣へ切り上げようとする。


(マジで相手のディフェンス固いな……、でも、ポゼッションは私達だ)


「蜂楽、もう一回！ ビルドアップやり直し！」

「ほい！」


Aが蜂楽にパスを出せば、蜂楽が胸トラップで駆け上がり、また布陣を切り直す。

チームＹも、声を上げながら守備を固めていく。そして、ふとAは考える。


(……てか、全然攻めてこないじゃん、此奴ら……。守備的布陣って言っても、０点じゃ勝てないのに……。と言うか、大川……全然目立ってないじゃん)


Aがチラリと大川を見れば、ポケットに手を突っ込んでいて、一人で何もせずにそこに立っていた。


─────……なんでずっと突っ立ってんの、彼奴……。一人だけ守備も何もしないで、私達の間で……。何かを、待ってる……？

49話「狙い」→←47話「次俺９作戦」

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す