黄衣の王が拾ってきた【第五人格,Identity V】{一章}

9.配膳 ページ9

「俺は配膳を手伝ってくかぁ。」


いつもは自分から配膳なんてしないジョーカーの発言に、配膳に向かうジョーカーの背中を唖然とした表情で見られているのに気づかずに、ジョーカーは食堂に続くドアを開ける。


食堂では、料理の乗った白い皿を、ハンターたちが使う長机に配膳をしている白無常がいた。


「俺も手伝うが、何すりゃいいんだぁ？」


いつもは、配膳し終わった後に来るジョーカーが、配膳をしている時に来たことに驚きつつも、「なら、スプーンとフォークを並べといて下さい」と言って、配膳を続けた。


一人一人座るところには、ヴィオレッタ嬢が作ってくれたキッチンクロスが敷いてあり、一人一人のチャームポイント？が縫われている。


「しかし、配膳なんて手伝ってくれた試しがないのに、今日はしてくれるんですね。」


白無常は、皆の主食を配膳し終わり、副食を配膳しながらジョーカーに訊いた。


「気まぐれだがぁ？」


ジョーカーは、最後のフォークを置きながら言った。


「その気まぐれを、毎回してくれませんか？」


朝はレオと白黒無常(まれにリッパー)で朝飯と昼飯の弁当を作っており、結構忙しい。


朝のゲーム(サーバー時間の6:00からのランクマッチング)に参加するハンターがいれば、戻ってきた時に食べれる物も作らないといけない。


晩は白黒無常が担当しており、配膳などは基本は白無常のみ、たまにリッパーや美智子が手伝ってくれるだけなので、手を借りたいと思っていたらしい。


「さぁなぁ？
やる気が出たらやるがなぁ。」


ジョーカーは、スプーン,フォークを置き終わったので、自分の席に座った。


「…？
兄の分は？」


いつも、長机の最後列に向かいになって食べる白無常と黒無常、黒無常の分だけ配っていなかったジョーカー。


「ああ、なんか腹空いてねぇらしいから、子の様子を見てるんだってよぉ。」


白無常は、「つまみ食いをしていたのですね…」と呟き、黒無常の分のキッチンクロスと主食,副食をキッチンに戻した。


「まぁ、あいつ(黒無常)のことだし、夜中にでも食うんじゃぇかぁ？
お前の飯を好んでるんだし、勿体ねぇしなぁ。」


確かに、黒無常が白無常の作った晩や朝を残したことが無いのを思い出した白無常は、ラップをして、『レンジで温めてから食べて下さい。白無常』とメモを置いた。


「やはり、誰かが手伝う方が早く配膳が終わるな。」

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