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高校生活九十日目 ページ5

「やあ、A」


振り返った先に見たのは太宰さんの姿だった

真っ暗な空間に一人でいるという恐怖心からか
私は凄く安堵して太宰さんに抱きついた


太「大丈夫かい?」


太宰さんはそう言って私の背中を優しく撫でてくれた
夢の中なのに、眠ってしまうほどに心地いい


貴「ねえ、ここ、何処だろ?」


話し声はやけに響く
太宰さんは私の質問に対して笑顔を返した


太「これは君の記憶なのだよ」


記憶?なら何故暗いのだろうか


太「いや、正確に言うなら君の前世の記憶だ
君が失った君の記憶」


前世…またそれか、と私は思う
前世の記憶ならば真っ暗なのも頷ける

私に前世の記憶なんてないのだから


ていうか、まずは前世の記憶なんて持ってる人いるのって話なんだけどね


貴「前世の記憶…ですか。残念ながら私にはありませんね
太宰さんにはあるの?」


冗談半分で云ってみた
しかし、帰ってきたのは長い沈黙


私はそれを肯定と受け止めた


貴「嘘、でしょ。なんなの、イタすぎるんだけど」


太宰さんは何も云わない


貴「なんなのよ!ハッキリしてよ!!
貴方は…っ、どうして、そんな顔してるの…!」


太宰さんをつかむ手を離す
訳が分からない。どうしてそんな悲しそうな顔をするの

どうして今にも泣きそうな顔をしているの



私にはわからない。そして、心がそれを思い出してはいけないと叫んでいるように痛む


太宰さんの泣き顔を見たくない


どうしてか、私はそう思っていた



貴「あー、もう!そんな顔しないでよ!
調子狂うじゃん…」

駆け寄って抱きしめる
何故、こんなことをしているのか自分でもわかっていない


ただ、なんだかこうしていたくて
そして、こうしていないと太宰さんが消えちゃいそうな気がして


私は太宰さんから離れられなかった


太「すまない。でも、君が頭痛に苦しむのはあと少しの間だけだ


そしてその時は君を───。」



最後の言葉はよく聞き取れなかった
ただ、最後に見た太宰さんの顔がとても幸せそうに笑っていたものだから

私もつられて笑った




そこで、目は覚める

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ユズポヨ(*´ω`*)(プロフ) - とても素晴らしいハッピーエンド!!!とても面白かったです!!! (2018年7月18日 2時) (レス) id: c5765c3274 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - まぁ太宰さんならありえ……ますね!← (2017年10月3日 7時) (レス) id: c3a5a30d5d (このIDを非表示/違反報告)
レイン(プロフ) - 千さん» そういう事にしましょう(( 太宰さんなら十分あり得ますもんね! (2017年10月3日 0時) (レス) id: 61ce060edd (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 服を贈り物にするのって、その贈り物を着ている人を自分が脱がせたい的な意味があるらしいですよ。つまり……そういう事ですか?(ゲスw (2017年10月3日 0時) (レス) id: c3a5a30d5d (このIDを非表示/違反報告)
キキララ(プロフ) - 面白い!兎に角面白い!お体に気をつけて、更新頑張って下さい! (2017年8月29日 18時) (レス) id: 14f33ab48c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:レイン | 作成日時:2017年6月18日 15時

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