私の価値は10億らしい (ページ6)

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「ま、やっぱ逃げられるよね」

これで逃げない方がむしろ怪しい。
五条悟は小さくなっていく彼女の背中をぼんやりと見つめた。

(さすがに10億をドブに捨てるのはなぁ)

元々散財趣味のない五条にとっては払っても痛くも痒くもないお金ではあったが、さすがに買ったものを易々と手放すのは惜しい。

買った以上は彼女の髪から指の先まで五条のものなのだ。

もう一度外に出て、彼女の方へ走ることにした。

(思ったより早いな…)

五条は足が早い方である。そもそも足の長さが長いために1歩が大きい。その上身体能力も高い方だ。

すぐに追いつくと思ったがそうでも無い。

「ちょっと本気出しますか」

もちろん呪力は使わない。下手に呪霊を呼んでしまったら面倒だ。

地面を蹴る力を強くして、スピードをあげる。

ふと彼女が振り返った。

彼女は大きくその瞳を開いて、思いっきり顔を顰めた。「あ、やべ」という顔をする。彼女も走るスピードを上げたが───

「ふごぎゃっ…」
「あ……」

小さい段差か何かにつまづいたのか思いっきりコケる。頭からつっこむ所だったので急いで彼女の首根っこを掴んだ。

「おっふ」
「危ない危ない。その顔に傷でもついたら大変だ」
「…」
「んーっと……綺麗な声してるね！」
「どこのナンパだそれは」

思っていたよりも低い声だった。

あの耳障りな甘ったるい女子特有の高い声ではなく、淡々としていて色で表すなら水色みたいな声。冷たい声とかじゃなくて、澄んだ水みたいな、本当に綺麗な声。

「やっと喋ってくれたね」
「…」

彼女はわかりやすく「しまった」という顔をする。そして諦めたようにため息をつく。

「桜峰」
「ん？」
「桜峰Aです。名乗られたんですから、名乗り返すのが礼儀でした。非礼をお詫びします」

こちらを見る瞳はまだ警戒の色が残ってる。

んー……とりあえず僕が一つ言いたいのは

この子少なくとも見た目だけならめっちゃ好みだわ。