第九話 何方 ページ9
∞
「お、おかえりーAさん」
探偵社に帰ると、隣のデスクで太宰さんが本を読みながら待っていた。
「……何してたんですか太宰さん」
「国木田くんの胃を治すには如何したら良いかなって考えてた」
「貴方がまず問題を起こさなければ良いでしょ」とツッコミを入れる。
すると太宰さんはウヘヘと呟きながら「それは無理だよ、性みたいなものだから」と返してきた。本当に嫌な性格してるなこの人。
《飄々として掴みどころのない変人》それが私の中での「太宰治」という男の印象だ。
時には目の奥に闇を抱き、何を考えているのか判らない時がある。普段から考えていることは判らないので思うだけ無駄かもしれないが。
「……太宰さん」
「ん、如何したの?」
私が一言云うと、身を乗り出して聞く体制に入る。
「敦くんって、Ωなんでしょうか」
思わず云ってしまった口に手を当てる。
世の中で第二の性について語るのはご法度だ。況してや相手を疑うように他人と喋るなど言語道断。
「すみませんッ、気にしなくて」
良いですから、と続けようとした言葉を太宰さんが遮る。
「そうなんじゃあないかな、とは私も思うよ」
「………………え」
「あ、別に私そういうの気にする人じゃないから安心して」
彼はヘラヘラと笑って無害であることを証明する。
「……よ、良かったぁ」
入社一ヶ月もしない内に上司に嫌われずに済んだ。其の安心感は言葉に言い表せない程だ。
「でもまあ、実際探偵社員にはΩの人多いし」
「そうなんですか?」
口先ではこんな事を云っているがΩの人がいることは私も気づいていた。探偵社に連れてこられた時に、この部屋に充満するΩの独特な匂いに感づいたからだ。
「国木田くんはαで、谷崎くんもα。ナオミちゃんはβかな。乱歩さんもβかα。与謝野先生はαで、賢治くんもα───あれ、結構少なかったかも」
もしかしたら事務員の方にもいるかもね、と太宰さんが云う。
じゃあ貴方は、何方なんですか。
「太宰さんは___」
「私かい?」
私が聞くと、太宰さんは妖艶な笑みを浮かべてこう答えた。
太宰さんはそう答えると、また何処かへ行ってしまった。
秘密、ということだろうか。
∞
116人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Gal - 魔人ガーZ…なんかあったな、そんなの。ガンダムみたいな奴… (4月27日 19時) (レス) @page45 id: 6203c50de1 (このIDを非表示/違反報告)
サラミザラ(プロフ) - お二人共コメント有難うございます!!真逆そこに触れていただけるなんて……(笑) (3月4日 14時) (レス) id: 1a675fd086 (このIDを非表示/違反報告)
零奈(←履歴を消したバカ)(プロフ) - 瑞穂さん» 同じく!! (3月3日 23時) (レス) id: b9e38a5313 (このIDを非表示/違反報告)
瑞穂(プロフ) - 物語に関係ないけど、魔人ガーZ好きです (3月3日 23時) (レス) @page45 id: 18f9935b97 (このIDを非表示/違反報告)
サラミザラ(プロフ) - graply12さん» 私チョロいのでその言葉信じちゃいますよ……??良いんですね!?!?コメント有難うございます!!公開するのはいつになるかは分からないんですが、書き溜め作っときますね……! (3月2日 22時) (レス) id: 1a675fd086 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ