運命の番【文スト】

第三十八話　知人Aさんへさようなら ページ41

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「其のですね、これは何と云いますかぁ…………ち、知人からの贈り物でして。変な男が寄って来ない為だとか」



結婚した訳ではない、という事を伝える為に謎の知人Aを創り出す。ゴメンネ。

眉を顰める者も居たが、何とか信じてもらえたようで場の雰囲気が和み始めた。



「ヘェ、賢い奴が居るようだね。確かに、既婚者と思われる女に詰め寄るような"馬鹿"はきっと居ないだろう」



ニマァ、という効果音が付きそうな程意味ありげに口元を歪め、肩を震わせた数名の男性陣に向かって云う与謝野さん。



「まァ無事に帰ってこれたことですし。これにて一件落着ってことで、皆さん仕事に戻りましょう。ね」



残業増えちゃいますよー、と谷崎くんが声を掛けて社員を動かす。ありがたやありがたや。

私の仕事も溜まってるんだろうなぁ。早くやらないと。



「そうだ、敦。鏡花を連れて遣いに行ってこい。念の為、発射式の電動針(スタンガン)を持っていくと良いだろう」



其の言葉とともに何やら怪しい封筒が手渡される。事件の香りがしますな。

という事は今回が鏡花ちゃんの初仕事か。



「頑張ってね、鏡花ちゃん。えいえいおーだよ」

「えいえいおー」



行ってきます、と少し緊張した声で探偵社を出ていく彼等を見届ける。初々しさが滲み出ててクソ可愛い。

───そんな風に笑っていられたのが懐かしい、と感じる現在。


何時の間にか時は飛び、敦くん等が探偵社を出て小一時間が過ぎた頃、「ビー」と気立(けたたま)しい電子音が鳴り響いた。

何や何や。と一人思っていたら、国木田さんが声を張り上げて「戦闘員は直ちに向かえ！」と大声で言い放った。


其の儘大方の戦闘員が出て行って静まる探偵社。何が起こっているのか判らない。



「こりゃあ拙い事になりましたねぇ……無事だと良いんだけど」



春野さんが溜息を付いて云った。"無事だといいんだけど"という言葉が少々胸に引っかかる。



「何が在ったんですか？」

「嗚呼、Aちゃんは知らなかったか。鏡花ちゃんの夜叉って携帯から命令を出して動かされてたから、其れを悪用されないために指示式(プログラム)を変えたの。念の為、着信があれば信号を出すようにもしてたんだけど───」

「其れが鳴ったって事、ですね」



…………え、其れって結構ヤバいんじゃね？



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