第三十二話 正直云って ページ35
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「君は私が運命の番だって判った時、如何思った?」
街灯で照らされた暗い夜道を二人で歩いていた時、不意に森さんが口を開いてそう云った。
「……まぁ、驚きはしましたよ。でも顔め……色々とドタイプだったので結果オーライです。其れに」
一寸立ち止まって、隣へ向き直る。
「私の事を大事にしてくれて、ちゃんと理解してくれる人だって判ったので」
屈託の無い笑みを浮かべて云い切った。
此れは紛れもない本心である。αらしからぬ言動をしているのに、其れを倍の力で包み込む彼は最早私だけの神様。
「此れからも宜しくお願いします、森さん」
私がそう云うと、森さんはポカーンとした表情になった。
が、直ぐに何時もの表情に戻り、諦めたように笑った。
「否、其処は[大好きですよ]とかじゃない?」
「まだ其処迄じゃないです」
「うぅ、辛辣………」
四十路の男性が泣く真似をするって中々にシュールであることに気付いた。見る分には良いけど目立つから止めて。
矢っ張り私はSなのかもしれない。
「此処迄で大丈夫です」
自分の住むマンションの手前まで辿り着き、森さんに話し掛ける。
「ちゃんと鍵は締めるんだよ?変態に襲われそうになったら股間を蹴って110番通報だからね?」
「最後ら辺は貴方に通じるとこ在りましたね」
「忘れようか」
それじゃあさようなら、と彼に背を向けて歩き出そうとした刹那、強い力で腕を後ろに引っ張られた。
体勢を崩して彼に寄り掛かるようなポーズになる。
「っえ、ちょ」
困惑する私を置いて、彼は段々と顔を近づけてきた。遂に私が目を瞑った瞬間───額に何かが当たった。
「………此の儘時が止まってしまえば良いのに」
森さんはそう口にすると、私の頭に手を置いて撫で、手を振って帰って行った。
未だ仄かに生暖かい感覚が残っていて、私は其の上をなぞる事しか出来なかった。
「いっ、今のって……」
いざ自分で言葉にしてみると、とても心音が五月蝿くなった。されたのは額だけど。
林檎のように赤くなるまで紅潮した顔を覆い、私は長らく外で悶絶する羽目になった。
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Gal - 魔人ガーZ…なんかあったな、そんなの。ガンダムみたいな奴… (4月27日 19時) (レス) @page45 id: 6203c50de1 (このIDを非表示/違反報告)
サラミザラ(プロフ) - お二人共コメント有難うございます!!真逆そこに触れていただけるなんて……(笑) (3月4日 14時) (レス) id: 1a675fd086 (このIDを非表示/違反報告)
零奈(←履歴を消したバカ)(プロフ) - 瑞穂さん» 同じく!! (3月3日 23時) (レス) id: b9e38a5313 (このIDを非表示/違反報告)
瑞穂(プロフ) - 物語に関係ないけど、魔人ガーZ好きです (3月3日 23時) (レス) @page45 id: 18f9935b97 (このIDを非表示/違反報告)
サラミザラ(プロフ) - graply12さん» 私チョロいのでその言葉信じちゃいますよ……??良いんですね!?!?コメント有難うございます!!公開するのはいつになるかは分からないんですが、書き溜め作っときますね……! (3月2日 22時) (レス) id: 1a675fd086 (このIDを非表示/違反報告)
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