14、その気持ちの名前は ページ16
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「それって、そういう意味で私のことが好きってことかい?」
「…〜っ!し、しらない!」
「じゃあこの手は何かな?」
「これは…っ!その、勢い余ってというか…。
ご、ごめんなさ…____」
私の言葉でより頬を赤く染めて、慌てて手を離そうとする彼女の手を、今度は私が強く握って引き止めた。
まだ、この小さくて温かな手を離すには惜しい。そう自覚する前から勝手に体が動いていた。
「…私の隣、座って欲しいな」
態とらしく上目遣いで言ってみせると、彼女はぎこちなく頷いてから一度私の手を離し、拳一つ分開けて隣に座る。
そのもどかしい間隔をずいっと詰めて、彼女の肩に体を密着させた。
そして再度彼女の手を取って、細くて華奢な指と自身の指を絡ませる。
「お、治くん…」
「ねぇAちゃん。私のことを運命の人と言っておきながら、先程の言い訳は無理があると思うのだけど?」
「どういうこと…?____ひゃっ?!」
手を繋ぎ直した頃から、ただならぬ雰囲気を感じていたであろう彼女は、未だその正体が掴めず茫然と私を見ていた。
そんな彼女の腰に手を回して更に距離を詰めると、彼女は可愛らしく悲鳴をあげた。
嗚呼、本当にこの子は外界と接することなく生きてこなかったのか。あまりにも分かり易い遠回しの告白をしておきながら、その気持ちの名前がわかっていないのだろう。
そしてそれを問い詰めると全て否定する。恋というものに触れず、未だ純心を脅かすような禁忌だとでも思っているのだろうか。
そうだとしたら、あまりに滑稽で愛おしい。
「わからないのなら、教えてあげる。
君と私が、たった今同じ気持ちでいるということをね」
「え…?」
観覧車の外には、花火が大きな音をたてて夜空を彩っているというのに、そんなものには目もくれず私達は互いだけを瞳に映している。
この空間だけ刻が止まっているように思えた。
「好きだよ、Aちゃん。
私にとっても、君は運命の人だ」
「っ…!」
耳元でそう囁いてみせると、彼女の肩がびくんと震えた。
そして彼女の顔をもう一度見る。
熟れた林檎のように真っ赤で、爆発寸前といったところだ。
腰を抱いていた手を離し、その頬に優しく触れてみると、とても熱い。
潤って揺れる瞳には私だけが映っていた。
「えっ、ちょっ…?!治くっ…_____!」
彼女の是非を聞かずに顔を近づける。
その柔らかそうな唇に自然と誘惑されるのも、時間の問題だったのだ。
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ラザニア太郎(プロフ) - もちうさぎさん» もちうさぎさん、はじめまして。コメントありがとうございます^ ^可愛いと言っていただけて何よりです!そうですね…!修道服、もといシスターの着ている服を参考にデザインしました。ここで画質が悪いのが残念ですが、Twitterにも掲載しますので宜しければご覧ください (2022年11月11日 17時) (レス) id: 24908c6af5 (このIDを非表示/違反報告)
もちうさぎ(プロフ) - 服が可愛いしシスターって奴だよね! (2022年11月11日 16時) (レス) @page4 id: c2ca67a91e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ラザニア太郎 | 作成日時:2022年11月9日 16時