10、いい子 ページ12
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ジェットコースター、メリーゴーランド、お化け屋敷、コーヒーカップ…。
目に映るもの全てに心が踊らされ、私たちは園内を巡った。
彼女にとっての未知の世界が拓かれている。
目を輝かせながら、何かに気づくたびに笑顔で私を見てあれは何だと興奮した様子で此方に聞いてきた。
そんな彼女の表情はいつまでも飽きないもので、寧ろ惹かれて目が離せなくなる。
曇天の鬱陶しさを忘れるほどに。
「ん…？」
頭上から小さくて冷たい何かが落ちてきた瞬間、空を見上げるとまだら模様の鉛色が視界一帯に広がっていた。
嫌な予感がする。そう思うのも束の間、無数の雫が楽園の花々を刺すように落ちる。
「うそ…、雨降ってきちゃった…！」
「雨宿りしよう、Aちゃん。ほら、こっち」
狼狽える彼女の手を引いて、近くにあった園の装飾の一つである小さな小屋に避難した。
彼女は目の前の雨を見て心底残念そうに、あーあ。と溜息を吐いた。
「どうしてこのタイミングなの…」
「大丈夫、じきに止むさ。遠くの空が少し明るいからね」
「なら、せめて帰る時までには止みますように…！」
両手を固く結び合わせて、彼女は強く願った。
その姿は修道女として神に祈りを捧げるようには見えず、寧ろ遠足前日にてるてる坊主の前で懇願している子どものように見える。
そもそも私は彼女の祈る姿を見たことはないが。
いつか見てみたいものだと施策を巡らしていると、私たちと同様に雨宿りをしていた親子二人の声が耳に入った。
「お母さんお母さん、雨止まないよ〜！」
「大丈夫よ、きっと止むから。
いい子にしてたらお天道様が早く会いに来てくれるかもね」
「ほんとうに？！ぼく、いい子で待ってる！」
どこにでもいるような、何気ない会話をしていた。
ただ、その何気ない会話を彼女は引き込まれるように見て、聞いていた。
会話を聞いていた彼女の横顔は、どこか寂しくて切ない表情をしているのは気のせいだろうか。
私はこんな表情をしている彼女を見たことがなかった。いつも笑顔でいるか、少し怒ったようにしているかのどちらかだった。
哀愁漂う姿も素敵だと、そう思えればよかった。私は一人勝手に、微かな不安と疑問を抱いて心を曇らせる。
「私たちもいい子にして待ってたら、すぐに晴れてくれるよね、治くん」
“いい子”にしていたら______。
何を言っているのだろう、私たちはもう立派な大人だというのに。
私はただ微笑んで頷くことしかできなかった。
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ラザニア太郎(プロフ) - もちうさぎさん» もちうさぎさん、はじめまして。コメントありがとうございます^ ^可愛いと言っていただけて何よりです！そうですね…！修道服、もといシスターの着ている服を参考にデザインしました。ここで画質が悪いのが残念ですが、Twitterにも掲載しますので宜しければご覧ください (2022年11月11日 17時) (
レス) id: 24908c6af5 (このIDを非表示/違反報告)
もちうさぎ(プロフ) - 服が可愛いしシスターって奴だよね！ (2022年11月11日 16時) (レス) @page4 id: c2ca67a91e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ラザニア太郎 | 作成日時：2022年11月9日 16時
