22、奴だけには ページ24
国木田side
「国木田さんはとても素敵な方なのですね」
「とてもかっこいいです!」
「貴方はとても強くて、優しくて…」
「貴方のこと、とても尊敬しています」
…何なのだ、これは。
彼女の言葉が何度も脳内で反芻されては、決まりが悪くなって顔がまともに見られん。
顔に熱が帯び、まともに見れなくなった彼女の瞳から目を背けるように顔を伏せたが、それでも止まることのない俺への賞賛から次第に身体が前方へ倒れていった。
お世辞というものを浴びせられたことは幾らでもある。
この社会において、煩わしいくらいに充満している。
しかし、城崎が語っている時の瞳は決してそんなものを感じさせない、真っ直ぐとした純粋な目。
賛辞する相手に対して、あまりに素直すぎる言葉の数々。
それは俗世間のお世辞よりも、相対することに厳しさを感じた。
否、決して嫌なわけではない。寧ろ嬉しい。
だがあのような英国少女という名の美女を体裁された、彼女の純粋な瞳にずっと見つめられてしまうと、どうも決まりが悪くなる。
「国木田さん?あの、顔を伏せてしまって如何されました?
体調が悪いのですか?お水をご用意致しますか?」
「いや…、いらん…。大丈夫だ…」
なんと今の俺はたいそう無様なのだろうか。
太宰ならこのような時、調子に乗って舞い上がるだろう。その方がマシかもしれん。
嗚呼、顔を上げたくない。今の俺はどのような顔色なのだろうか。
「お〜い、おっまたせぇ〜!Aちゃん、国木田くぅーん…
て、どういう状況??」
「お嬢…国木田に何したんだ…」
「あら、太宰さんに鏑木も。漸くいらしたのですね。
その…国木田さんとお話ししていたら、急に顔を伏せてしまったのですが…。それに耳まで真っ赤になっていらっしゃるのです…」
「へぇ、フフッ 何を話したんだい?」
太宰の声音から、あからさまに今にも吹き出して大爆笑しそうだ。
城崎に事の顛末を話されて、奴が調子にのっておちょくらないようにせねば。また胃に穴が開きそうになる。
「えっと…、国木田さんの理想についてなのですが…」
「ンフフッ うん、それで?国木田くんの痛ーーッッ!!」
「えーっ?!」
俺は太宰が全てを聞く前に、人差し指と中指で目潰しをした。
奴は床に倒れ、両手を押さえてもがいている。想定通りだ。
「よし、全員揃ったな。話合を始めるぞ」
「いや、なんか1人脱落しそうなんだが…?」
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作者名:ラザニア太郎 | 作成日時:2021年12月21日 23時