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16、頼りになる彼 ページ18

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「__う、__お嬢!!」


「____っ!!」



酸素のない世界から、帰ってきた気分だった。

ただその気分は決していいものではなくて、先ほどの過去の自分を複製したような、あの時の頭が真っ白になったものと同じだった。


顔を上げると、3人は私を心配そうに見ていた。



「大丈夫か?急に顔が真っ青になっちまって…。それに息苦しそうだったが…」


「鏑…木…、ごめんなさい、私っ…」



身体に鉛を入れられたようだった。

そのせいで、会話するための酸素だって肺に入ってくる気がしない。


それに、なんと伝えれば良いのだろうかわからない。

ただ何もできない私は、途切れ途切れに謝罪を述べることしかできなかった。



「…一度出直そうか」




△▼△




「気分はよくなったかい?」


「はい…」



横浜繁華街を離れ、人気の少ない港近くにある公園のベンチで、何とか調子を取り戻していた。

私が太宰さんに様子を見てもらっている間に、鏑木は国木田さんと共に現場での状況説明をしてくれたらしい。

両者ともども有難いこととは言え、私の情けなさをより一層痛感させるものだった。



「ごめんなさい…私ってば、情けないばかりで…」


「それはいいとして…太宰、彼女に怪しからんことをしていないだろうな」


「してないよ〜!そういう考えしてる国木田君の方が彼女に対してやましい考えしてるんじゃないのかい?」


「だ〜れが変態だ!変態はお前の方だろうが!!」



国木田さんの両手の拳が太宰さんの頭を、みしみしと音を立てるように左右の側頭部を締め上げていた。

それでも相変わらず機嫌の良さそうな太宰さんを横目に、鏑木は私に話しかける。



「本当に、もう平気なのか?」


「えぇ…。もう大丈夫です、迷惑を掛けてしまいましたね。ごめんなさい」


「謝ることじゃない。それに、お嬢と俺はあの時同じ状況だったんだ。
現場で起きたことを説明するのは、俺だってできるからな。
だから無理すんな。気分が悪いなら早く言え」



鏑木は私の顔色も窺う様子もなく、ぶっきらぼうに言ってしまうけれど、言葉の節々から思いやりが篭っているようだった。



「ありがとうございます。頼りになりますね」


「ま、執事だからな」



そう言いながら鏑木は、空のコーヒー缶をゴミ箱に目がけて投げ捨てる。


執事はそういうことをしないと思うのですが…。

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作者名:ラザニア太郎 | 作成日時:2021年12月21日 23時

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