13、執事と主人 ページ14
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だいぶ話したおかげか。
話の流れを意識せず、自然体で城崎とたわいない話を重ねていた。
そしてこの会話の中だけでも、言葉遣いや会話の間の置き方から彼女の丁寧さが伝わり、尚且つ話しやすい。
最初に狼狽えたのは、あんなにも質問攻めをされてしまったからだろう。
積極的に会話に参加すれば、波に乗ることなど容易かったのだ。
だが彼女に慣れすぎたせいだろうか、つい心の内で気になっていたことを明かしてしまう。
「城崎にとって鏑木は何なのだ?」
「鏑木…ですか?」
しまった。と、心の中で焦りを感じた。
あの2人はもしや他人が触れてはいけないような、そんな関係ではないかと予測していたのだ。
後ろにいる鏑木がぴくり、と肩を揺らして、此方を睨んでいるのが伝わってくる。何とも背中を刺すような視線だった。
城崎は、喉を唸らせている。
やはり聞いてはならないことだったのだろうか。
「いや…言いたくなければ…」
「兄…。兄みたいなものでしょうか」
俺の心配は無用なものだったのだろうか。
確かに彼女は困る様子も狼狽する様子を見せず、ただ純粋に表現に悩んでいるように見えた。
「ふふっ、執事のことを兄と表すだなんて変かもしれませんね。
でも本当にその言葉が一番ぴったりな気がするんです」
「…鏑木があのような砕けた態度だから、か?」
「ん〜…。あの態度は彼と会ってからずっとですからね。何とも言えない感じがします」
「そういえば鏑木とはいつ知り合って…」
「楽しそうなところすまないが、そろそろ目的地到着だ」
言葉と言葉の境を割り込んできたのは話題の鏑木である。
言葉の通り、眼前には中華料理の老舗があった。
噂とすれば何とやら、だろうか。
否、彼はもとより後ろから会話を傍聴していただろうから、そうとは表現し難いが。
…というか、本当に良いところで会話が途切れてしまった。
城崎と鏑木との関係が太宰の阿呆が口に出してきたせいで、益々気になってしまったせいだ。
仕事に私情を持ち込んではいけないことを、口頭でも述べながら自分でも理解しているのに。
…まぁ、依頼人と仲を深めることは決して悪いことではないだろう。
下心という訳でもないし、依頼解決に向けて互いを理解するというのは良策である筈だ。
「あら…もう着いてしまったのですね。
またの機会に是非お話ししましょう、国木田さん!」
「残念だねぇ国木田く〜ん」
「…五月蝿い」
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作者名:ラザニア太郎 | 作成日時:2021年12月21日 23時