新人猟犬、修行中！-再編版-【条野採菊】【末広鐵腸】 (ページ9)

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7話ページ9

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「あれっ？！____ちょっ、まっ…！うわぁっ！！」

木刀は確かに鐵腸さん目掛けて振り落とした筈だった。なのに、木刀の先は地面に一直線であり、その勢いで私の体も持っていかれる。
そしてドサッ、と無造作な音を立てて真正面から転けた。

混乱する中で遠くから聞こえてきたのは、燁子さんの笑い声だけだった。

「一体何が起きたの…？！」

「避けたまでのことだ」

「いたっ」

鐵腸さんは真上から倒れたままの私の頭を、木刀でこつんと叩いた。
勝負あり、と素っ気無い声が頭上から降ってくる。

「鏑木、と言ったか。筋はいいが隙が多すぎる。剣術も不慣れと見た」

「う…。まぁ、初めてこんな木刀握りましたから…」

自分の面目なさに明け暮れながら立ち上がる。目の前の大きな体をしている鐵腸さんが、より強大な存在に見えてきた。

本当の実力は恐らくこれ以上…。いや、もっと強い。
同じ生体手術を受けている筈なのに、この差は遥かに大きすぎる。経験も、身体能力も、実力も…________。

「なら、鐵腸。これからは彼女の剣術を見てやってくれ」

「わかりました」

「それから、条野はここでの仕事を教えてやってくれ。
あと軍事研修の概ねの内容もな」

「はぁ…、それは士官学校で行うことでしょう」

「そう言わずに頼む…！」

遠くから見ていた隊長たちがぞろぞろと現れていた。
両手を合わせて頼み込んでいる隊長と、面倒臭そうにする条野さん。事を巡るのは私の話だ。

もう隊長ばかりに頼っていちゃダメだ…。強くなるためには、私から行動しないと！

「条野さん、お願いします！」

「…。」

ここで私にできる精一杯は、頭を下げてお願いすることだけだった。
実力がなければ、誠意を見せるしかない。そう勇気を振り絞ったが、頭を下げて見えなくなった条野さんの表情がどんなものか、正直怖い。

「鐵腸さんも！ご指導よろしくお願いします！」

「あぁ。…条野、あまり意地悪をするな」

「意地悪とかじゃなくてですね…。
あぁもう、わかりましたから！やればいいんでしょやれば…！
そんなに見つめてこないでください…！」

条野さんは半ばやけくそ気味了承してくれると、漸く私は顔を上げることができた。
思わず飛んで喜びそうになるのを我慢して、もう一度二人の新たな“先生”の方へ姿勢を正した。

「ありがとうございます！私、これから精一杯頑張っていきます！」

《猟犬》入隊一日目は、晴天の空に決意を改める良い日になった。