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20話 ページ22

鐵腸side


『ごめんなさい…。私、何もできなくて、助けられてばかり…。挙句にこんな怪我までさせて……』


血が通っていないのではないかと疑ってしまう程、青褪めた表情をした鏑木を思い出す。同時に包帯を巻いた掌を見つめた。

こんな傷は幾億もしてきただろう。体が痛みとして捉えることを忘れていた程に。
人民を護る為武器を取って戦うことが使命であり、傷を負うことさえも、当たり前のことだと思っている。
現に、部隊の中でこの軽傷を心配する者はいない。

だが、彼女は…________鏑木Aは違った。
必死になって止血処理を施してくれた、その姿を思い返すと少し心が温かくなったようで、かつ胸を締め付けられるような気持ちになる。

あの優しい彼女には、自分自身を責めないでほしい_________。


「鏑木、一体何処に……」


早朝の鍛錬に欠かさず参加した彼女が、今日初めて俺の元に来なかった。原因は間違いなく昨日のことだろう。

昨日、俺は彼女に礼すら言えていなかった。何より、二度とあのような顔をさせたくない。
会って、ちゃんと話さなくては。複雑な気持ちに胸を締め付けられるのは、例えひとときであったとしても御免だ。

そして衝動のままに、闇雲に建物内外を探し回った。


『滑稽で何が悪いんですか!?』

「…鏑木?」


突如、女性用の手洗場から怒声が響いた。声が震えて今にも泣いているような、悲痛なものだった。
それでも彼女は必死に言葉を紡いでいる。

誰だ、彼女を滑稽などと愚弄する者は___________。


「やめろ、これ以上は許さぬ」

「っ、鐵腸さん…!?」


鏑木を追い詰めていたのは条野だった。
視界に状況が映った瞬間、すぐさま彼女の頬に伸びる奴の手を払った。
睨みつけると、如何にも不機嫌そうな条野な顔が見える。


「人を嬲るのも大概にしろ」

「嬲る?ご冗談を…。
私はただ、ここで生きるうえでの心構えを彼女に問いただしていただけです。
他人の怪我一つにいつまでも執着したまま泣き喚かれるのも迷惑でしょう。当人が一番理解しているのでは?」

「誰が迷惑だと言った?
迷惑など微塵も思っていない。俺はただ、感謝を伝えたいだけだ」

「はぁ…、そうですか」


条野は呆れながら俺から顔を背けた。これ以上話していても無駄、そう考えたのだろう。

振り返ると呆然とした様子の彼女がいた。
どれだけ泣いたのだろう。目の下がすっかり赤くなっている。

それ程までに俺のこと心配してくれたのだろうか。

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とっふ - わぁ……夢主ちゃん可愛い…最高ですね! (1月3日 17時) (レス) @page2 id: 521a35a539 (このIDを非表示/違反報告)
るぅ - 最高です!続き楽しみにしてます!! (9月21日 20時) (レス) id: 2822ecfe2a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ラザニア太郎 | 作成日時:2023年3月27日 22時

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