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じゅうよん、 ページ16

太宰さんが浴室、そして脱衣所を出た処で、シャワーを手に取る。躰中に付いた泡を取り除くのは惜しいけど、手早く終わらせよう。



小さく扉を開けると、其処には着替えが用意してあった。流石に全裸で外に出ると云うのもと考え、さっさと身に纏う。



更に扉を開けると、長い廊下が待ち受けていた。私の居た部屋とは一部屋違い。移動のし易さから、此処にしたんだろう。



『ええと、玄関は、……と』



廊下の先に其れらしい扉を発見すると、安堵に胸を撫で下ろした。此れで、帰れる。此の場から、逃げられる。



でも、未だ出ない方が善いかも知れない。



もし太宰さんが近くを歩いていたら、もし見つかって仕舞ったら、きっと凄く酷い目に遭うだろうから。



昨晩を思い出し身を震わせるも、直ぐに立ち直った。もう終わりなんだから、慄く必要なんて無いよ。



『………ん、此の扉、は』



ふと私の居た部屋の反対側の扉を見遣る。一際壁と扉が厚い様に感じる卦度、気のせいかな。



がちゃがちゃと取手を捻ってみるも、鍵が掛かっていて開かない。…何なんだろう、少し厭な感じがする。



『……ま、いっか。もうきっと太宰さんも居ないだろうし、行こう』



___目が覚めた場所は、敵の拠点でも、尋問所でも無かった。随分と見慣れた景色。



此処は、私の部屋だ。



『………なん、で、私……だって、連れ去られて、』



此の時の私は酷く困惑していて、直ぐ隣に太宰さんが居る事になんて全然気付いていなかった。



「私が連れ帰って来たの。住所は森さんに聞いたよ。御早うA、任務御苦労様」



『っ、!?だ、太宰さ…!!』



本当は凄く悔しかったし、敵勢力に抵抗できなかった自分をとても嫌った。太宰さんに対して申し訳無さしか感じていなかった。



卦度、矢張り怖かった。



ぽろぽろ、と涙が溢れる。嗚呼、私の上司はこんなにも優しい。こんな出来損ないにも__



___玄関の扉に手を掛ける。



嬉しくて、少し心配で。其れでも、私は取手を捻った。内鍵があったから懸念していた卦度、かちゃり、と音が鳴る。



『___開いた!!』



思い切り扉を開け、頬を緩ませた。



善かった、早く逃げなきゃ。



私の尊敬する太宰さんは、こんな人じゃないんだから。此れはきっと、変な夢に違いない。



きっと、きっとそうだ。



然し、___




___大きくて綺麗な手は、容赦なく伸ばされた。

じゅうご、→←じゅうさん



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伊波トウナ(プロフ) - えっおわりです…?! (2023年2月16日 11時) (レス) @page17 id: ce08f5279c (このIDを非表示/違反報告)
湯川 - 終わっちゃったよ…あと26回くらい見れる笑 (2021年11月27日 7時) (レス) @page17 id: b53f4168a8 (このIDを非表示/違反報告)
天ぷら - 終わりなんですかぁぁぁぁぁぁあ (2021年9月12日 10時) (レス) id: b7f3dee41e (このIDを非表示/違反報告)
あきら - 素晴らしいです。更新待ってます。 (2018年11月25日 1時) (レス) id: a0d4f48c92 (このIDを非表示/違反報告)
あさぎ(プロフ) - 太宰さんの一方的で押し付けるような愛の形が好きすぎて…!支配的な愛情表現がたまりません!応援してます! (2018年8月27日 23時) (レス) id: 59706cc241 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:千紘 | 作成日時:2018年8月9日 16時

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