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四十二話 ページ44

「樫原……が?」

「そうだよ、お陰で敦君は意識不明の重体。彼だけではなく彼女と接触した他の社員も負傷という散々な事件だった。」

「いや、待てよ。その前に樫原は……奴は既に ____ 」



無意識のうちに動く中也の口を、太宰は左手の人差し指で制した。




「彼女は殺されてなどいなかったのだよ。現に、私だって彼女と接触したしね。」

「仮に生きていたとしても!!奴はどうやってあの時、生き延びたんだ!?芥川や黒蜥蜴が取り逃がすなんて有り得ねぇ!!」

「有り得るのだよ _____ 」




その瞬間、太宰の目から光が消えた。
その目に中也はかつて見覚えがあった。暗く冷たく、慈悲など赦さない、そんな目だ。
そして太宰は静かに口を開く。





「彼女が……樫原Aが既に異能力者に成っていたのなら。」

「 ____ ッッ!!」




中也の言葉にならない驚きが一筋の汗となって彼の頬に伝う。






「死体確認をした時は……人数分在ったんだぞ。手前、それはどう説明するんだ。」

「そんなの簡単さ、中也。帰ったら研究所抹殺に携わった下級の構成員が全員、『今も居るか』調べ給え。勿論、その抹殺以降に別の案件で死んだ者は除いて。………一人だけ、『居ない』筈だよ。」

「………構成員のうち一人を身代わりにしたってことか。」

「その通り!頭が善くなったねぇ、中也。恐らく、殺されそうになった所を、返り討ちにして身代わりにしたのだろう。その後は、想像に難くない。」



立ち上がっていた中也は重い足取りで自分の席へと戻る。かぶっていた帽子を取り外し、自分の前に置いた。




「樫原は……何時から異能力者に成っていたんだ。」

「まぁ、ここからは私の憶測だけどね。多分、中也と最後に会ったときには既に成っていたと思うよ、『完璧』ではないだろうけど。」

「『完璧』、ではない……?」




中也の頭の上に疑問符が一つ、浮かび上がる。




「君が言ってたじゃないか、所長が怒鳴りながら部屋を出ていったと。所詮は『人工』の異能力者だ、限界はある。基礎的なものは出来上がっていたけれども、多分発展した能力はまだ完成していなかったのだろう。」

「完成……していない。」



中也がぼそりと弱々しい声で呟く。



「その上、ポートマフィアから『資金援助を受けている』という圧力(プレッシャー)が所長の焦りに拍車をかけたのだろうね。だから、あの時怒鳴り散らしたのだろう。」

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 芥川龍之介 , 中原中也   
作品ジャンル:恋愛
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夏蜜柑(プロフ) - さけられるチーズさん» コメントの返信が遅くなってしまいすみません。応援ありがとうございます。これからも頑張って書き続けますのでよろしくお願いします(^^) (2016年5月2日 17時) (レス) id: 4b1740a2d9 (このIDを非表示/違反報告)
さけられるチーズ(プロフ) - これからどう芥川さんにいくか気になります!♪( ´▽`) 更新頑張ってください! (2015年7月3日 19時) (レス) id: 26b822a438 (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 中矢さん» コメントありがとうございます。とても嬉しいです。期待に答えられるよに書いていきますのでこれからも是非よろしくお願いします。 (2015年5月5日 22時) (レス) id: 61e9595a71 (このIDを非表示/違反報告)
中矢(プロフ) - 楽しく読ませていただきました。私も原作読んでます。いいですよね!続き頑張ってくださいね! (2015年5月3日 19時) (レス) id: 7f7dd8e1cd (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 禁煙Dutchさん» ありがとうございます。更新を頑張りますのでこれからもよろしくお願いします。 (2015年3月29日 21時) (レス) id: 9f8193b493 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夏蜜柑 | 作成日時:2015年3月20日 20時

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