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三十九話 ページ41

手前(テメェ)、飯はちゃんと食ってるのか……?」

「おぉ!勿論、勿論。中也こそちゃんと食べてるのか?相変わらず、小さいけど。」

五月蝿(うるせ)ぇ!!口を縫い合わすぞ!!」

「おっほっほ!!怖い怖い!!」




口では物騒なことを言っておきながら俺は内心酷く安堵していた。「何時も通りの樫原」だと。

だが、しかしそれは精神的な面で、だ。肉体的に見ればそれは一目瞭然、何かが可笑しい。

いや、今思えば「何時も通りの樫原」何て全くの嘘だったかもしれない。




「手前、その痣やら傷やらは如何(どう)した…。」




俺の問いかけに樫原はビクリと身体を震わせてから口を開いた。



「あー、いや、まぁね……。ほら、私さ、こう見えても実験体(モルモット)だろ?だからその、在るべきオプションっつーか……これがスタンダード、みたいな?」




そう言って奴は腫れ上がってきた右頬を気にしながら弱々しい高笑いをした。

怒りか、悲しみか、恐れか、どれにも当てはまらない、でも当てはまるようなそんな感情が俺の中に沸き起こった。

俺は帽子を取って樫原に投げつけ、近くに在った適当なビニール袋に水道の冷たい水を流し入れ取手を結んだ。




「オラ、それなりに整った顔してンだ。腫れてこれ以上酷くなる前に冷やしとけ。」



絵に描いたように目を点にしている樫原は少しの間の後、それを受け取った。
奴はまじまじと珍奇な物を見るように俺の作った簡易氷嚢(ひょうのう)を見ていた。









「………中也ってさ。」

「おう………。」

「結構、雑なんだ。」

「仕方がねぇから口だけじゃなくて目も縫い合わせてやるよ。」

「嘘だって……有り難う。後、帽子も小さいね。」

「………おう。帽子は、返せこの野郎。」




そう言って奴は右頬に大事そうに氷嚢を当てた。俺も、何となくその姿を見てようやく心底から安堵ができた。

この後、本当は少し会話をしてから帰る心算(つもり)だった。だが、樫原が「今日の先生に見つかると中也まで怒られちゃうから、帰りな。」って言うから渋々帰ってやった。
別に資金援助しているポートマフィアの幹部を、所長が叱るなんてこと有り得ねぇンだけどな。

だけど、それが間違いだった。
過去に行けるなら俺はその時の自分をぶん殴る。




何故なら ______









帰った直ぐ翌日に研究所の抹殺が決まったからだった。

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 芥川龍之介 , 中原中也   
作品ジャンル:恋愛
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夏蜜柑(プロフ) - さけられるチーズさん» コメントの返信が遅くなってしまいすみません。応援ありがとうございます。これからも頑張って書き続けますのでよろしくお願いします(^^) (2016年5月2日 17時) (レス) id: 4b1740a2d9 (このIDを非表示/違反報告)
さけられるチーズ(プロフ) - これからどう芥川さんにいくか気になります!♪( ´▽`) 更新頑張ってください! (2015年7月3日 19時) (レス) id: 26b822a438 (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 中矢さん» コメントありがとうございます。とても嬉しいです。期待に答えられるよに書いていきますのでこれからも是非よろしくお願いします。 (2015年5月5日 22時) (レス) id: 61e9595a71 (このIDを非表示/違反報告)
中矢(プロフ) - 楽しく読ませていただきました。私も原作読んでます。いいですよね!続き頑張ってくださいね! (2015年5月3日 19時) (レス) id: 7f7dd8e1cd (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 禁煙Dutchさん» ありがとうございます。更新を頑張りますのでこれからもよろしくお願いします。 (2015年3月29日 21時) (レス) id: 9f8193b493 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夏蜜柑 | 作成日時:2015年3月20日 20時

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