二十六話 ページ28
「君だけがその異能を使えると思ったら…大間違いだぜ」
「!!!」
不意に敦の顔の横に、風が通った。
そして頬には前にも味わったことがある生暖かい感触が伝う。
少し遅れてから敦は無意識に少女の攻撃を避けていたことを理解した。
「やっぱり………この異能って!!」
「そう、その通りさ……敦くん。」
敦は真横にある、彼女の腕を見て震えながら言った。
「僕と同じ異能じゃないか……!!!」
白い絨毯のような毛、そして見事な黒い模様。さらには月に照らされて妖しく黒光りする鋭い爪。
そう、彼女のその虎化した腕は敦の異能そのものだった。
「そんな、驚くことないだろ?あぁ、ちょっと逃げないでよ。」
思わずに後ろへと退いてしまう敦。
頬に伝っていた生暖かい液体を拭う。赤いそれは敦の虎化した腕によく映えていた。
待ってくれ。
何故だ、何故なんだ。
僕と同じ異能?虎に変身できる?
仲間なのか?
いいや、違う。その前に ______
月を背景に、少女の翡翠の目は敦のことを逃がすことなく捕らえ続けていた。
口角を上げて彼女は一歩、踏み出した。
少女がこちらに来る。
_____ その前に彼女は既に「死んで」いたはずじゃないか。
「さぁ、楽しもうぜ!!敦くん!!!」
________ ドゴォッッ!!!!!
飛びかかってきた少女を間一髪避ける敦。
次の攻撃に備えようと顔を上げるが、今の衝撃で辺りには砂ぼこりが舞う。
「ゴホッ…!!!ゴホッ……何処だ…!?」
「此方だよ。」
声がしたのは背後だった。
咄嗟に振り向くも敦の方が遅く、鳩尾に少女の蹴りを食らう。
が、しかし
「何度も同じ手が通用すると思うな!!」
「なッ!」
敦は力をふり絞り、自分の鳩尾にめり込んだ少女の脚を掴む。そして蹴りの力を利用してそのまま彼女を投げ飛ばした。
飛ばされた少女の身体は数十米先に生えていた木に打ち付けられてようやく止まった。
「……ッ! ははっ、やるね。一寸前まですぐ近くで寝転がっていたくせに……ゴホッ!!ゴホッ!!」
「国木田さんと賢治君には悪かったけど、ずっと見てたんだ。君の戦い方を…。」
はは、そりゃどうも、と少女は力のない声で言うと右のポケットを探り始めた。
「…何をしてるんだ。」
「敦くん、」
彼女がポケットから取り出したもの、それは ___
「君に最初に見せてあげよう。」
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夏蜜柑(プロフ) - さけられるチーズさん» コメントの返信が遅くなってしまいすみません。応援ありがとうございます。これからも頑張って書き続けますのでよろしくお願いします(^^) (2016年5月2日 17時) (レス) id: 4b1740a2d9 (このIDを非表示/違反報告)
さけられるチーズ(プロフ) - これからどう芥川さんにいくか気になります!♪( ´▽`) 更新頑張ってください! (2015年7月3日 19時) (レス) id: 26b822a438 (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 中矢さん» コメントありがとうございます。とても嬉しいです。期待に答えられるよに書いていきますのでこれからも是非よろしくお願いします。 (2015年5月5日 22時) (レス) id: 61e9595a71 (このIDを非表示/違反報告)
中矢(プロフ) - 楽しく読ませていただきました。私も原作読んでます。いいですよね!続き頑張ってくださいね! (2015年5月3日 19時) (レス) id: 7f7dd8e1cd (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 禁煙Dutchさん» ありがとうございます。更新を頑張りますのでこれからもよろしくお願いします。 (2015年3月29日 21時) (レス) id: 9f8193b493 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏蜜柑 | 作成日時:2015年3月20日 20時