二十話 ページ22
「嗚呼、本当に申し訳ございません。貴君のような美しい殿方にお怪我をさせてしまうなど…。」
そう艶かしい言葉を並べながら少女は賢治の手を触り、見つめる。
そして怪我をしている手の平を自分の目の前に持っていき、それを
「なッッ………!!!!!!」
舐めるのであった。
少女の思わぬ行為にうっかりと声を出してしまう国木田。自分がされた訳でもないのに顔を赤くして硬直していた。
それに対して賢治は依然としてその様子を眺めているだけだった。
それをいいことに手の平だけでなく指まで舐めはじめる少女。唾液を滴らせたその舌のせいで賢治の手は濡れきっていた。
「さてと、これで大丈夫ですよ。安心してください。」
そう言いながら最後は自分が持っていたハンカチで唾液を拭き取り、その翡翠の目を細め首をかしげて賢治を見つめた。
「わあ、ありがとうございます!凄いですね、都会の方はこうやって怪我を治すのですか?」
「都会の方々全員がかどうかは存じ上げませんが、少なくとも私はそうさせていただいてます。」
笑顔を向けたまま賢治の手をとり、その場から立ち上がる二人。
あまりのことだったのか、国木田は相も変わらず顔を紅潮させ二人を見ていた。
その様子に気づいた賢治は国木田の方へと駆け寄り少女に「治して」もらった手の平を見せた。
「国木田さん見てください!やはり都会はおもしろいですね、僕の知らないことがたくさんあって驚くばかりです。」
「あ、あぁ。そうだな……。」
固まっていた脳がようやく再起動しはじめ、言葉を発せられるようになった。
するとどうだろうか、今まで「そこ」で見ていた少女がいつの間にか国木田のすぐ前まで来ていたのだ。何の気配もなく。
そしてどうしたことか、突然少女は国木田へと身体を預けたのだ。
「お!オイ………!!! 」
「そうなんです!殿方にお怪我をさせてしまって忘れてしまっていたのですが奥で人が倒れているのです!!血まみれで!!」
一瞬どうしたらよいか判断しかねる状況になるのかと思いきや、やはりそこは仕事人間。
少女のその言葉に国木田は本来の目的を思い出した。
「もしかして、その人銀髪の男の子ですか?」
賢治の問いかけに少女は頷いた。
間違いない、敦だ。
「よかったら案内してくれ。ウチの社員かもしれないんだ。」
国木田の真剣な眼差しに少女は一瞬、不気味な笑みを浮かべたかと思うとすぐに情が湧くような顔をして無言で頷いた。
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夏蜜柑(プロフ) - さけられるチーズさん» コメントの返信が遅くなってしまいすみません。応援ありがとうございます。これからも頑張って書き続けますのでよろしくお願いします(^^) (2016年5月2日 17時) (レス) id: 4b1740a2d9 (このIDを非表示/違反報告)
さけられるチーズ(プロフ) - これからどう芥川さんにいくか気になります!♪( ´▽`) 更新頑張ってください! (2015年7月3日 19時) (レス) id: 26b822a438 (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 中矢さん» コメントありがとうございます。とても嬉しいです。期待に答えられるよに書いていきますのでこれからも是非よろしくお願いします。 (2015年5月5日 22時) (レス) id: 61e9595a71 (このIDを非表示/違反報告)
中矢(プロフ) - 楽しく読ませていただきました。私も原作読んでます。いいですよね!続き頑張ってくださいね! (2015年5月3日 19時) (レス) id: 7f7dd8e1cd (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 禁煙Dutchさん» ありがとうございます。更新を頑張りますのでこれからもよろしくお願いします。 (2015年3月29日 21時) (レス) id: 9f8193b493 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏蜜柑 | 作成日時:2015年3月20日 20時