十九話 ページ21
「まったく、何が三十分で終わらせるだ!時計の針は既に一周したぞ!」
「敦君、どこに行っちゃったんでしょうね。」
夜の街を国木田と賢治が駆けていく。
国木田の右手には携帯が握られている。
しかしコールオンが耳元で続くばかりで敦が出る気配は一向になかった。
ちっ、と舌打ちを一つして自分より少し前を走っている賢治に国木田は尋ねる。
「賢治!本当に敦はその先にいるんだな!」
国木田の問いかけに賢治は振り向いて言った。
「はい、いますよ。多分。」
「その自信はどこから湧いてくるんだ、いつも。」
「ふふ、野生の勘とかいうやつですかね。」
そう言うと賢治は更に走る速度を上げていく。
いつも走り回っている国木田でさえ付いていくのがやっとであった。
(これで敦がいなかったら恨むぞ、太宰!)
__________________
「此処だと思うんですけどねぇ。」
「ハァッ……ハァッ……。敦、何処にいる……。」
巨大な敷地には灯りがポツポツとその内を照らしていた。
風が少しあるせいかブランコがぎぃこと気味悪く音をたてて揺れていた。
国木田が息を整えて周りを見渡す。
本当にただの公園である。
(奥に行ったのか?それとも賢治の勘が外れたのか……?……後者は考えがたいな。)
そんなことを考えている時であった。
「わっ!」
賢治の驚いた声とともにどん、と何かが倒れた音が聞こえた。
瞬間的に後ろにいた賢治へと国木田は目をやる。
「いたたた……、すみません。お怪我はございませんか?」
そこにはまるで星を閉じ込めたような翡翠色の目を持つ少女が尻餅をついていた。
「いえいえ、大丈夫ですよ。……いてっ。」
恐らくこの少女と賢治がぶつかったのであろう。
同じく尻餅をついていた賢治が立ち上がろうと手に力をいれると針で刺されたような痛みがあった。
手を砂利道に勢いよく着いたか、多少皮が剥けて出血していた。
それを見た少女が大仰そうに慌てた。
「まあ!申し訳ございません!私がぶつかったばかりに……。」
「このぐらい、大丈夫ですよ。気にしないでください。」
「賢治、大丈夫か。このハンカチでも使え。」
国木田が賢治にハンカチを渡そうとしたときだった。
それを受け取ろうとした賢治の手を少女が突然握ってきたのだった。
181人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夏蜜柑(プロフ) - さけられるチーズさん» コメントの返信が遅くなってしまいすみません。応援ありがとうございます。これからも頑張って書き続けますのでよろしくお願いします(^^) (2016年5月2日 17時) (レス) id: 4b1740a2d9 (このIDを非表示/違反報告)
さけられるチーズ(プロフ) - これからどう芥川さんにいくか気になります!♪( ´▽`) 更新頑張ってください! (2015年7月3日 19時) (レス) id: 26b822a438 (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 中矢さん» コメントありがとうございます。とても嬉しいです。期待に答えられるよに書いていきますのでこれからも是非よろしくお願いします。 (2015年5月5日 22時) (レス) id: 61e9595a71 (このIDを非表示/違反報告)
中矢(プロフ) - 楽しく読ませていただきました。私も原作読んでます。いいですよね!続き頑張ってくださいね! (2015年5月3日 19時) (レス) id: 7f7dd8e1cd (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 禁煙Dutchさん» ありがとうございます。更新を頑張りますのでこれからもよろしくお願いします。 (2015年3月29日 21時) (レス) id: 9f8193b493 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夏蜜柑 | 作成日時:2015年3月20日 20時