十話 ページ12
敦と少女から男までの距離は大体十
さらに二人は男が太宰に飛びかかってから反応するまでに遅れを取ってしまった。
たとえ敦が虎化をして男を取り押さえようとしてもそれは太宰がやられてからになるだろう。
この場に国木田さんの能力があれば、敦はそう思った。
敦が目を閉じようとした直前に見た光景、それは男が持っているナイフの先端が太宰の首筋を捉えようとしていたところだった。
_________もう駄目だ。
そして目を瞑った敦。
その直後に聞える肉を断ち切るような音。
濡れた雑巾を床に投げつけたような液体の音。
敦は覚悟した。
震える脚を必死に押さえつけながら、そして、目を開く。
「グアッッ………!?!?!?」
「え…………!?!?!?」
予想していた最悪の光景。
の筈だった。
「な、え、……嘘、嘘だろ………グハッッ!!!」
「嘘じゃあないぜぇ、旦那ァ。」
敦はハッと我に返り、自分より後ろにいた少女を見た。
「電波切断の異能ねぇ、ふんまあ及第点としておこう。だが、『使えない』なぁ。」
そう言って少女は指をパチン、と鳴らす。
そして
太宰に刺さっていたはずのナイフは更に男の胸元を深く裂いた。
男自身が!、自らの身体を!、刺しているのだ!!
何故?
それは敦にも太宰にも分からないだろう。
現にもその二人は目を見開いてその光景を見ているのだから
そしてパチン、ともう一度その音が鳴るとナイフは腕と共に胸元を貫通させていた。
後に残ったのは男の無残な死体と飛び散った血だけ。
「ったく、すまねぇな太宰さん。返り血が貴方の服を汚しちまった。」
「いや、私は…大丈夫だ。」
流石の太宰もこの状況に自慢の脳味噌は動いてくれなかったようだ。
少し嫌な沈黙が三人を包む。
口を開いたのは少女だった。
「その二人の息はまだある。今からでもお得意様の医者に見せればまだ助かるだろう。だからお前さんらはこの二人を頼む。」
この場には不似合いの翡翠の目を瞬かせながら言う。そして自分は立ち上がり、男の傍まで寄ると
「私はコイツの始末をしておく。だから今度こそさよなら、だ。な?」
そう言って男の死体を軽々と担ぐ。
今では怖いと思わせるような笑顔を浮かべながら少女は太宰の横を通って場を後にした。
コツコツと靴の音を響かせながら
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夏蜜柑(プロフ) - さけられるチーズさん» コメントの返信が遅くなってしまいすみません。応援ありがとうございます。これからも頑張って書き続けますのでよろしくお願いします(^^) (2016年5月2日 17時) (レス) id: 4b1740a2d9 (このIDを非表示/違反報告)
さけられるチーズ(プロフ) - これからどう芥川さんにいくか気になります!♪( ´▽`) 更新頑張ってください! (2015年7月3日 19時) (レス) id: 26b822a438 (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 中矢さん» コメントありがとうございます。とても嬉しいです。期待に答えられるよに書いていきますのでこれからも是非よろしくお願いします。 (2015年5月5日 22時) (レス) id: 61e9595a71 (このIDを非表示/違反報告)
中矢(プロフ) - 楽しく読ませていただきました。私も原作読んでます。いいですよね!続き頑張ってくださいね! (2015年5月3日 19時) (レス) id: 7f7dd8e1cd (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑(プロフ) - 禁煙Dutchさん» ありがとうございます。更新を頑張りますのでこれからもよろしくお願いします。 (2015年3月29日 21時) (レス) id: 9f8193b493 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夏蜜柑 | 作成日時:2015年3月20日 20時