初めての後輩 ページ16
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そんなこんなで、ライブラに新人が半ば強制的に入った。
弟弟子さんの名前はツェッド・オブライエン。
今は特注の水槽の中で何とか落ち着きを取り戻している。
へこたれてるというか、へこんでるというか。
さっきからずっと頭を抱えっぱなしでまだよく状況を把握しきれてないみたい。
『まあまあ元気出してくださいよツェッドさん。ここも案外悪いとこじゃあないですよ』
｢はあ…ありがとうございます｣
なんのなんの、どういたしまして。
というかこれほんと特注の水槽何だよね、早速用意できたとかやっぱすごいなあ、ライブラって。
｢…しかし、昨日は色々ありましたね。間違いなく今までの人生の中で、一番長い日です｣
『ありあり過ぎてまだ全部飲みきれてなさそうっすね。宛ら夏至みたいな感じでしょ』
｢恐らくそれよりも長いものかと、ただ例えとしては悪くないですね｣
へへ、そうでしょ。
俺も今自分でいい感じの例えできたなと思った。
『あ、そうだ』
なんて思えばある事を思い出して、どこからともなく俺は脚立を持ち出した。
そして水槽に掛けて上から覗き込む。
『俺A･ボールドウィン。よろしくツェッドさん、て事で握手しましょ』
｢え、いやしかし…傷付けてしまうかもしれないので｣
『またまたあ、大丈夫っすよ。流石に顔は出せませんよね…おりゃ』
水の中から顔出したら苦しいだろうから俺は水の中に手を突っ込む。
ひんやりしてて気持ちい。
ツェッドさんは恐る恐るといった感じで俺の手をそっと握ってくれた。
｢…こちらこそ、よろしくお願いします。Aさん｣
『うん。……ねえツェッドさんの手ってめっちゃぷにぷにしてません？すごく気持ちいんですけど』
｢そ、そうでしょうか？｣
揺れる水面で表情はよく分からないけど照れてるのは確か。
すべすべしてるしぷにぷにしてるしひんやりしてるし…これ夏は最高だな絶対。
俺はそう信じるぞ。
｢…あ、あのAさん。そろそろ｣
『んあ、ごめんなさい。つい夢中になって』
耐えかねたんだろう、ツェッドさんがそう言った。
俺は水の中から手を引き抜いて脚立を降りる。
それから数時間くらいツェッドさんと話して。
今度一緒にご飯食べに行こうってなって、話は終わった。
｢…そういえば、どうしてそんなに僕に良くしてくれるんですか？｣
そりゃあだって
『初めての後輩だから？』
嬉しくてしょうがないんだもん。
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作者名：ゆず招き猫 | 作成日時：2020年5月24日 0時
