伍拾弐 ページ6
眠らせた、と言ったか。
切符を切っただけで眠らせるとはどんな能力なんだ。
なら、煉獄さん達は強制的に眠らされたと捉えても間違いない。
理由を説明して貰おうと立ち上がろうとした時。
「いいとも、よくやってくれたね」
ゾッと、背筋に悪寒が走る。
この悪寒に、嫌な気配。
鬼だ。
ただ今まで相対した鬼とは違う。
「お眠り、家族に会えるいい夢を」
その言葉と共に、バタッと倒れる音が聞こえる。
車掌さんが眠らされたのだろうか。
…なるほど、この鬼は人を眠らせる能力を有しているのか。
煉獄さんを反対側に傾け、私は立ち上がる。
コン、と床にまた刀を着いた。
『人を眠りに落とす術たァ厄介なモンだ。お前さん、血鬼術持ちの鬼ですかい?』
「あれ?可笑しいな、全員分の切符には切り込みを入れたはずなんだけど」
殺意はまだない。
私は顔を顰めた。
『ハナから私は切符自体に触れちゃいねェですし、切って貰ってもねェ。…本体ここに在らずか、身体の一部のみと見て取れる』
「…もしかして君、目が見えてないの?」
『だったら何ですかい、眠らせるのには不利だと?』
「そんな事誰も言ってないじゃないか」
ピリ、と空気が変わる気がした。
素早く刀を抜こうとしたその時。
「血鬼術・強制昏倒催眠の囁き」
『ッ…!!』
ぐらりと足が縺れる。
音が不鮮明になっていくと同時に、眠りに着いてしまった。
「…面白い鬼狩りだね、目が見えなくなっても戦い続けるなんて」
下弦の壱、魘夢がそう呟いたとは知らずに。
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作者名:ゆず招き猫 | 作成日時:2019年11月30日 16時