漆拾捌 ページ32
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黄金色の瞳。
連想されるのは金色に照らされた稲穂、または夕焼け
または…雷。
別に関連している訳ではない。
瞳の色が呼吸に関連しているなどとは考えにくいし、それは単なる私の思い過ごしだろう。
ただ、善逸君の一声もあって、胡蝶さんと伊之助君の両者すら驚いた気配をしてみせた。
「うっそ、Aさん目の色綺麗すぎじゃない?!しかも俺の髪の色と類似してない!?やだ大好き!!」
「おい紋逸、こいつギョロ目のモンだろ。手ェ出すなよ」
「それぐらい知ってるわアホンダラ!!というか俺には禰豆子ちゃんが居ますしー!!」
珍しく伊之助君の冷静な物言いに、また笑ってしまった。
『君達は本当…仲が良いですねェ』
くすくすと笑っていると「Aさんが前より神々しく見える…」なんて善逸君が呟いていた。
その時ふと、胡蝶さんの細い指が頬に触れた。
目元を撫でられ、何やら視線も感じる。
『胡蝶さん…何か?』
「いえ、別に。ただ改まって見ると、本当に綺麗な目をしていますね」
『それは、お褒めに預かり光栄です』
目を褒められるのは、いつぶりだろう。
兄以来だろうか。
「そういやよォ、何で糸目野郎はずっと目ェ閉じてたんだ?見えるんなら初めから開いとけよ」
「伊之助、お前馬鹿なの?Aさんはずっと目が見えてないんだぞ」
「じゃあ何で目ェ開いてんだこいつ」
「何でって、なん…何で?」
結局私に聞くのか。
まあ無理もない、誰にも理由なんて話した事はないんだから。
『…まあ大雑把に言えば、少しでも感情を読み取りやすくするため、ですかね』
「本当に大雑把だ…」
『あとは…前よりもはっきりと、気配を見るためですよ』
ずっと目を閉じていたのは、余計な光を目に入れないため。
陽の光は気配を読み取るのに些か眩しすぎていた。
だから気配に集中するため、目を閉じていた。
…あとはまあ、人に目を見られたくないという事もあったが。
『でもこの先…今のままでは太刀打ち出来ないと、思いまして。だから踏み切ったんですよ、少しでも正確に見定められる様に』
今回の上弦との戦いで、今までのようには戦えないと悟った。
この際、光がどうかとはもう関係ない。
少しでも変わって、強くならなければならない。
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作者名:ゆず招き猫 | 作成日時:2019年11月30日 16時