伍拾 ページ4
『音ですよ、私が使ってる呼吸は音でさァ』
「そうだったんですか?」
『ええ、まぁ。…そうなんですがね』
「…?」
そう、私が使う呼吸は音だ。
これは自然に獲得したもので、音柱である宇髄天元さんに習ったものでもない。
まあそれ以前に継子でもないし、会った事もないが。
『実の所、私が本来使うべき呼吸は「音」じゃない気がするんでさァ』
今までは音の呼吸でやり遂げてきた。
それで今の階級で落ち着いている。
だが最近は、呼吸を使うにあたって違和感が絶えないのだ。
『もしかすると、私にゃこの呼吸を使う義理が無ェのかもしれねェですね』
呼吸が私を拒んできている気がしなくもないのだ。
身体が苦い薬を拒む様に、徐々に、はっきりと。
炭治郎君は何も言わなかった。まるで申し訳ない様な気配を私に見せて。
励ましてあげようと口を開く瞬間、肩を掴まれ横に引き寄せられた。
「心配するなA!君は君の戦い方を貫けばいい!いつかその呼吸が使えなくなっても、俺は君の傍で励まし続けよう!」
隣の煉獄さんからそう告げられた。
私はぽかんとする。
別に完全に使えなくなるという確信もないのだが…。
『…ふへ、そらァどうも。ありがとうごぜェます』
その時、煉獄さん越しに善逸君の気配が怒りに揺れた気がしたが気にしない。
『てェ事です、炭治郎君。そう落ち込まずとも大丈夫ですぜ』
「…はい!」
気配は何時もの様に戻った。
安心はさせられたらしい。
やはり、炭治郎君に沈んだ気配など似合わない。
私はそう思った。
「いつか使えなくなった暁には炎の呼吸を会得してみないか?」
『やァ、どうでしょう。私に会得できますかねェ』
「Aなら大丈夫だろう!君は俺の大事な人だからな!」
『…煉獄さん声抑えてくだせェ。それと善逸君、無闇矢鱈に殺気は出しなさんな。宜しくねェです』
「目の前でいちゃつかれて抑えられると思う!?」
「何だ羨ましいのか黄色い少年!君も大事な人を見つけるといい!」
…それは善逸君に対して侮辱と言える言葉だと思うのだが。
この後更に奇声を上げたのは言うまでもない。
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作者名:ゆず招き猫 | 作成日時:2019年11月30日 16時