検索窓
今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:17,553 hit

陸拾弐 ページ16

「幸せな夢の中にいたいよね、わかるよ」


「俺も夢の中にいたかった…」


炭治郎君は、少し寂しそうな声音で言った。


倒れた人達をその場に座らせ、炭治郎君は声を掛ける。


「大丈夫ですか?」


恐らくそれは、敵意のない人物に対してだろう。


何故かその人物の気配は、僅かに炭治郎君と似ている様にも思えた。


「……ありがとう、気をつけて」


「はい!」


声は男のものだった。もしかすると、炭治郎君と繋がっていた人物だったのだろうかと推測する。


炭治郎君はどんな夢を見ていたのだろう。


ふと気になった。


だが今は、任務が最優先。


この戦いが終わったら、炭治郎君に聞いてみようと思った。


「禰豆子!Aさん!」


炭治郎君に名を呼ばれると同時に、手を握られる。


移動するのか。


私は彼の手を握り返して、車両内を駆ける。


引かれて着いたのは、扉の前。


炭治郎君はそれをガラリと開けた。


「ぐっ!」


途端に、炭治郎君が苦しそうに声を出す。


理由は聞くまでもなかった。


その扉を開けた瞬間、吹き抜けてきた風と同時に、何とも重々しい匂いが鼻を突いたのだ。


何故気づかなかったのだろう。


伊之助君が窓を開けたあの時、そんな匂いは全くしなかったのに。


「Aさん!俺は先頭車両に行きます、風上から鬼の匂いがする。禰豆子と一緒にみんなを起こしてください!」


『無理はしなさんな、炭治郎君!』


「はい!」


いつの間にか、炭治郎君の気配は上にあった。


多分屋根の上に飛び乗ったのだろう。


私が一声掛けると、炭治郎君は先頭車両の方へ走って行った。


『さて…じゃあ禰豆子、まだ眠ったままのみんなを起こしに行きましょう。上は炭治郎君が何とかしてくれるはずです』


「ムー!」


そして今度は禰豆子に手を握られ、私達はみんなの居る所まで戻った。





「何だ、また戻って来たのか?」


『ええ、ちぃと忘れ物がありましてね』


さて、どうしたものか。


煉獄さん達はまだ起きていない。


恐らくまだ夢の中。


どうしたらいいのだろう。


すると誰かに肩を掴まれ、横に退けられる。


そして、ごそごそと探る様な音がしたと思えば、手を取られて、掌に何かを乗せられた。


手触りは紙…いや、これは切符だ。


「…術の元はこれだ。俺は見てたから何となくわかっていた。これを、そこのお嬢ちゃんがまた燃やせばこいつらも起きるだろ」


切符を渡してきたのは、私と繋がっていた男だった。

陸拾参→←陸拾壱



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (28 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
91人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ゆず招き猫 | 作成日時:2019年11月30日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。