夢ならどうか覚めてくれ

花と植物2 ページ5

『何かお探しで…？』


聞いてみると、男ははっとした。


少し慌てているようにも見える。


｢む…いや、観葉植物がないかと思ってね｣


『ああ、それなら店の奥に置いてます。ウチ普段花ばかり扱ってるんで植物は脇役みたいなもんなんっすよ』


｢そうだったのか｣


一二語言葉を交わすと相手の性格とかは大体分かるのは俺のスキルみたいなものだ。


この人は見掛けに寄らず優しい人なのかもしれない。


『…良かったら持ってきましょうか？植物』


｢いいのかね？｣


聞いた途端、声のトーンを少し上げる男性。


そんなに観葉植物が好きなのか、と頭の隅で思った。


『んじゃあ、ちょいお待ちを。手短なもの持って来ますんで』


男性がこくりと頷くのを見て、一先ずカウンターにガーベラが入った箱を置いて店の奥に向かう。


見掛けに寄らず優しい人で…意外と植物が好きなのかもしれない。


いい趣味してるな。


そう思って少しニヤけたのはまた別の話。





暫くして、俺は箱に色々な観葉植物を入れて店先に戻る。


『んえーと…お待たせしました、手短に世話の簡単なやつ諸々選んできたんで…良かったらどぞ』


ゴトン、と箱を置いて中身を見せる。


男の人は俺の倍あるので、見下ろす様に覗き込んだ。


｢これはどれも…｣


『室内で育てやすいものを全て持って来たんで…まあ、難易度は低いやつっすね。どれも』


シェフレラ、ポトス、オリヅルラン、サンスベリアなどなど…箱に入れてあるものは初心者でも扱いやすいものばかりだ。


ヘンテコなこの街でも、緑や花はしっかりある様で少し安心した所はある。


さて問題は…この人が買ってくれるかどうか。


商品を売るんだから…もうちょい後押しして置いた方がいいだろうか。


『中でもサンスベリアは定期的に水をやらなくても育ちますし、乾燥に強いから枯れる心配もそうそうない。


別名を虎の尾と言うらしく、魔除けの効果もあるだとか。…まあそれは風水的なとこでしょうけど。


あと、お客さん見た目からして外出多そうですし…世話にはうってつけじゃないですか？』


｢ふむ…中々詳しい事まで知っている様だな？｣


『こー見えて、植物系にはちぃっとばかし詳しい身なんで。それのお陰すかね』


あと売る側なんで少々知識売らなきゃかなとも思って、なんて言ってにへらと笑う。


男の人は小さく笑ってくれた。

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