夢ならどうか覚めてくれ

仮住所3 ページ23

『うへぇー…玄関から広、住めるここ』


｢流石に風邪引かれちゃ困るからそういう冗談は無し｣


だから真面目な話だって。


貧乏人の生活を知らねーなこの。


こっち来てから経済の事元の世界とガッタガタだったからお小遣い使うのにも苦労してたんだぞこっちは。


まあ自分の事はその辺に、玄関を軽く見て何だかちょっと、寂しいなって思った。


『…サンスベリア、いやユッカとか…アグラオネマも意外と…』


｢A？｣


『花屋にあったかな…明日ちょっと確認しに戻って、無かったら別の…でも何が合うかはちゃんと見とかないと…』


｢おーいA｣


『うお、』


久しぶりに、植物の事で考え込んでる時に肩に手を置かれるとめちゃくちゃビビる。


｢どうしたんだい急に。ブツブツ何か言ってたみたいだけど｣


『……や、殺風景なこの玄関に合う植物は何かなあと元職業者なりに考えてました』


｢ふうん……で、クラウスと同じ趣味を持つ君はこの玄関にどんな植物を置きたいと思ったのかな？｣


ふうんて、ちょっと心に刺さっちゃったかな。


どんなかあ、さっきの物とか、この人ぴったり…と言うかイケメンならどんな植物でもいい気がするんだよなあ、クラウスさんみたいに。


いやでも今はクラウスさんじゃなくてスティーブンさんにあう物。


『…さっき言ったアグラオネマとか、こういう玄関に良いかと』


｢その心は？｣


漫才ぽい返し方すな。


『直射日光は無し、温度は…多分一定。アグラオネマは直射日光嫌いなんでこういう玄関は置くのに良好。


ある所では｢飾ると幸せを呼び込むことができる｣っていう言い伝えがあって、花言葉はスマート。


スタイル抜群で普段とかおしゃれそうで仕事も手早く終わらせるスティーブンさんにぴったりじゃありません？


あとは種類によって葉の色とか斑点とか表れ方が違いますし見た目でも楽しめる。最近は空気清浄効果とかあるっぽいらしい…んですけど、どうでしょう』


随分長い事玄関で喋ったぞ。


スティーブンさんちょっと真顔になっちゃってんぞ。


流石にべらべら言い過ぎた…かな？


｢へえ…そうか。うん、成る程ね。よく分かった｣


『え、何が？』


｢君がさらっと怖い事を言う事が｣


『何それどゆこと』


答えを聞きたかったけど軽くぽんぽんと頭を撫でられるだけで何も言ってくれなかった。



解せぬ。

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