夢ならどうか覚めてくれ

問い ページ3

この世には目に見えるもの全てが全てではないという。


見えないものは人のすぐそばに居るとも聞く。


かと言って、俺はそういうの視える訳でもないし、ましてや聞こえる訳でもない。


ただ、今自分が居るこの空間が異質だという事に戸惑っているだけだ。


一面に広がる赤い花。


それは世界の色が褪せてしまいそうな程に真っ赤だった。


ゼラニウム。


頭の知識ではその花だったはずだ。


一瞬恐ろしくも思え、一瞬綺麗だと思った。




ーー選べ。




突然頭の中に太い男の様な声が響く。




ーー何かを失って得る力か、失わずして得る力か。




はて、何だその意味の分からない質問は。


と言うより矛盾しているじゃないか。


どちらを選んでも何かを失う気がする。


それなら、どうせなら、失う方がいい。


『失って得る、取れるもんなら取ればいい』


そう言った瞬間、俺の意識が急に暗くなる。


ゼラニウムの中に倒れ込むのを最後に、俺は深い眠りに陥った。

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